本当にコロナワクチンが必要なのは誰なのか? 医療情報学の専門家が特別寄稿
オミクロン株の感染拡大に伴い、ワクチンの3回目接種が推奨され、さらに小学生以下のワクチン接種も始まろうとしている。老若男女を問わず、国民全員にワクチンを打つことは、社会全体の戦略として正しい。しかし、個人レベルではどうだろうか。第6波の数字をまとめてみた。
今回使ったのは、厚生労働省のホームページ「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」で公開されているデータである。期間は昨年12月29日から、最新データがある2月15日までの7週間とした。
この間の新規陽性者数は約200万人、死亡数は1786人で、年代別の数字は下の表に示した通りである。
重症者数は、全国の合計数が毎日公表されている。しかし、今日の重症者の大半は昨日も重症者であり、明日も重症者である可能性が高い。これだけでは、患者の正味の人数が分からない。
ただ、重症者(ICU入院、人工呼吸器装着、ECMO装着のどれかを満たす患者)は、軽快ないし死亡まで、平均して10日から2週間以上を要するといわれている。
ここでは、平均7日と短めに設定し、期間中の延べ重症者数(2万7949人)を7で割った3993人を正味の重症患者数とした(実際よりもかなり多いと思われる)。
これとは別に、週ごとの年代別重症者数が公開されている。
ただし数字を報告していない県も多く、そのままでは使えない。
数字で見る「第6波」の現状
そこで分かっている範囲で年代別の割合を計算し、これと推計重症者数を掛け合わせて、年代別の正味の重症者数とした。
こうして数字を表にすると、いくつか気づくことがある。
(1)10歳未満や10代はほとんど(まったく)亡くなっていない。
(2)同様に重症化する子供もごく少ない。
(3)20代から30代でも、死亡リスク、重症化リスクは極めて低い。
(4)60代以上は重症化や死亡のリスクがある程度高く、高齢になるほど増えていく。
(5)90歳以上は死亡数が重症数を大きく上回っているが、基礎疾患のある高齢者が発病すると、重症化に至る前に亡くなるケースが多いことを表していると考えられる。
したがって、個人レベルでいえば、10代以下でワクチンを打つ必然性は低いといえそうだし、20代や30代で3回目の接種を受ける必要性もさほど高くはなさそうである。60代以上は3回目を受けたほうがいい。しかし90歳以上では、ワクチンだけでは死亡を防ぐことは難しいかもしれない。
もちろん、子供の場合は保育園や学校の方針、それぞれの家庭の事情、社会人では仕事内容や職場の方針なども考慮しなければならない。年代にかかわらず基礎疾患の有無など個々人の置かれる立場により、ワクチン接種の必要性は変わる。その上で、ここで示したこともある程度意識しながら、総合的に判断していただけるといいだろう。
(長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授・永田宏)