米国ではブタの心臓を人間に 「異種移植」は長く研究が続けられている
残念ながら命を救うまでには至りませんでしたが、世界初となる人間に対する心臓の「異種移植」が実施された事実は、医学的に大きな意義があったといえるでしょう。
以前から、治療のために人間以外の動物の臓器を使う異種移植の研究は、長年にわたって続けられています。中でもブタの心臓は大きさや構造が人間の心臓と非常に似通っているため、食肉にされる部分外であるブタの心臓を解体業者から購入し、手術の事前訓練用に「ウエットラボ」という呼称で以前から使われてきました。
ブタは哺乳類ですから、人間と同じく心房と心室がそれぞれ左右に分かれている4つの部屋で構成されているのはもちろん、大動脈などの血管が出ている位置をはじめ、心臓をつくっている各パーツのあり方とサイズが似ているのです。たとえば心臓弁膜症の患者さんに対する弁置換術では、以前からブタの心臓弁を用いてつくられた生体弁が広く使われています。
近年は動物愛護の観点から、動物実験用に生きたブタに麻酔をして模擬手術を行った後に犠牲死させるといったことは避けられるようになりましたが、食肉用に解体された後の臓器を医学的に転用することは許容されているのです。