台風の接近で死亡リスクがアップする 米国医学誌で解析報告
熱帯から亜熱帯の海洋上で発生する低気圧を熱帯低気圧と呼びます。発生場所や低気圧の強さに応じて「台風」「ハリケーン」「サイクロン」など、異なる名称で呼ばれますが、本質的には同じ気象現象です。
低気圧は気象災害だけでなく、頭痛や倦怠感、めまいなど、人の健康状態にもさまざまな影響を与えることが知られています。熱帯低気圧と死亡リスクの関連性を検討した研究論文が、米国医師会誌に2022年3月8日付で掲載されました。この研究は、米国衛生統計センターのデータベースを解析したものです。1988~2018年における米国の死亡者3360万人分のデータと、米国1206郡(郡は州の下位の行政区画)における熱帯低気圧の接近状況が調査され、死亡リスクとの関連性が検討されました。なお、この研究における熱帯低気圧とは、風速で34トット6以上と定義されており、気象庁が定義する「台風」と同等のものです。
解析の結果、熱帯低気圧の通過から1カ月後の死亡リスクは、熱帯低気圧の接近が1日増えるごとに、傷害による死亡で3.7%、感染症による死亡で1.8%、肺など呼吸器の病気による死亡で1.3%、心臓病による死亡で1.2%、精神系の病気による死亡で1.2%、統計的にも有意に増加しました。一方、がんによる死亡はリスクの増加を認めませんでした。