白血病や悪性リンパ腫に対して1回だけで済む治療法がある
患者さん自身のリンパ球の中のT細胞(免疫細胞)を取り出し、遺伝子改変操作でCAR(キメラ抗原受容体)と呼ばれる特殊なタンパク質をつくり出すことができるようにしたうえで、このCAR-T細胞を患者さん自身に投与するのです。これは、たった1回だけの治療です。
私は、2年前にこの治療法でがんが消えた方がいるという報告を知りました。
薬価が3300万円以上という高価な治療法ですが、たった1回だけの治療です。その時点でがんの塊が消えたとしても、その患者さんはそれで大丈夫、完治したのだろうか? そんな疑問について、最近、CAR-T療法を担当している医師に聞いてみました。すると、こんな回答が返ってきました。
「がんが消えて、長期に生存されている方もおりますが、再燃される方もいらっしゃいます。長期生存者が根治しているのか、免疫による寛解なのかは判断ができないところがあります。再燃の機序として、CD19消失やCAR-T細胞への耐性が言われています」
このように、たった1回だけの治療でがんが消える治療法もあるのです。こうした治療法が他のがんでも可能になることが期待されます。
がんの種類によって、進行状況によって、いろいろな治療法を選択できる時代になってきました。抗がん剤治療の後は緩和医療への移行ということばかりではなく、がん征服へ、やはり希望は持ちたいものです。