滝沢馬琴のメガネは1両1分 細かい手仕事をする職人に人気だった

公開日: 更新日:

 メガネは宣教師から有力大名への献上品として日本に入ってきましたが、江戸時代初期には相当数が輸入され、広く普及していたであろうことをお話ししました。では、それはどのように使われていたのでしょうか? それを示すのが当時の庶民らの暮らしなどを描いた絵画です。

 メガネをかけた人物が描かれている日本最古の絵画は「南蛮屏風」といわれています。南蛮とはポルトガルやスペインのことで、南蛮人の日本での様子を狩野派の絵師が描いたものが南蛮屏風です。安土桃山時代から江戸初期のものです。

 メガネをかけた日本人が最初に描かれた絵画は豊臣秀吉の七回忌の祭礼を描いた「豊国祭礼図」の中の人物といわれています。その後、メガネが国内生産され、その普及と共に細かい手仕事をする職人がメガネを使っている様子を描いた絵画が続々と登場します。そこには、蒔絵師、仏師、木版師らさまざまな職人がメガネを使って仕事をする姿が描かれています。

 その中には有名な作家もいました。「南総里見八犬伝」を書いた滝沢馬琴です。旗本用人の五男として生まれた馬琴は、30歳から本格的な創作活動に入った遅咲きの作家です。ご存じの方も多いでしょうが、滝沢馬琴は八犬伝を書いている途中で失明し、息子夫婦への口述筆記により作品を完成させています。失明するまで馬琴はメガネを使っていました。馬琴が買い求めたメガネの値段は1両1分だったそうです。息子で医師の宗伯も目が悪く、2人で同じメガネを使っていたという見方もあります。

 いずれにせよ、江戸時代のメガネは高価ではあったものの、収入があり、手に入れる意思があれば庶民であっても一家にひとつは備えつけることができた、ということかもしれません。

(メガネウオッチャー・榎本卓生)

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  3. 3

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  4. 4

    高市政権大ピンチ! 林芳正総務相の「政治とカネ」疑惑が拡大…ナゾの「ポスター維持管理費」が新たな火種に

  5. 5

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  1. 6

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 7

    沢口靖子vs天海祐希「アラ還女優」対決…米倉涼子“失脚”でテレ朝が選ぶのは? 

  3. 8

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  4. 9

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  5. 10

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち