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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「原因」と「結果」で考える社会の落とし穴…マスクの効果における病態生理と統計学的事実

公開日: 更新日:

 今回は非感染者のマスクの効果について、同じように病態生理と疫学的事実で考えてみる。新型コロナ感染症はエアロゾル感染によって広がるということがわかっている。エアロゾルとは空気中を漂うウイルスを含んだ粒子である。

 この粒子は不織布マスクをすり抜ける大きさでもある。そのような情報が流れると、マスクなんて無駄だと考える人が多いかもしれない。しかし現実はそうでもない。コロナを含むエアロゾルがマスクをすり抜けるから感染するというのは病態生理学的に考えるアプローチだが、これは感染する状況、メカニズムの一部を説明しているだけで、原因と結果を示しているわけではない。しかし、多くの人がこれを原因と結果であるかのように受け止める。

 この背景には、さまざまな出来事を原因と結果で説明しようとする社会がある。病態生理によるメカニズムの説明は、因果関係で説明しようとする今の世の中と相性が良い。たまにしか見ないテレビでも、ありとあらゆる番組で原因と結果を扱っている。ちょうど今たまたまついているテレビで、深海魚の形態をすべて原因と結果で説明している。目が巨大化することで暗い深海でもエサをとらえやすくなっていると。雑誌の記事も、ネット上の情報も同様だ。

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