著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「原因」と「結果」で考える社会の落とし穴…マスクの効果における病態生理と統計学的事実

公開日: 更新日:

■「わかりやすい」は真実ではない

 その代表は二酸化炭素排出による地球温暖化だろう。二酸化炭素排出の増加が原因で温暖化する。多くの人がそう考えている。二酸化炭素には熱を空気中にため込む温室効果がある。その温室効果により気温が上昇する。わかりやすい説明だ。しかし、これはわかりやすいというだけで、この関係が因果関係かどうかは実のところよくわからない点も多い。しかし、わかった部分だけで因果関係を説明してしまう。

 少し考えればわかることだが、地球上でのエネルギー消費は最終的には熱の放出につながる。エネルギー消費が増加すれば地球は温暖化する。しかしこうした情報はあまり聞いたことがない。消費エネルギー全体が減れば温暖化を予防できるというのも、二酸化炭素排出制限と同様に有効な対策と思われるが、そういう議論はあまり聞いたことがない。ここにも、メカニズムや因果で説明することの危険があらわになっている。

 現実に起こっていることは複雑である。多数の原因と、考えられる因子と、それに伴って起こってくる多数の結果が絡み合っている。そのほんの一部を取り出して、これが原因でこれが結果だということはたやすい。たやすいうえに、そういうわかりやすい話にすれば多くの人が信じやすい。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言