「原因」と「結果」で考える社会の落とし穴…マスクの効果における病態生理と統計学的事実
話をマスクによる感染予防に戻せば、コロナの感染はエアロゾルだけでなく、飛沫感染も重要な要素である。不織布マスクがエアロゾルを通すとしても、飛沫の大部分を防ぐとすれば、その分の予防効果は十分期待できるだろう。あるいはマスクをすることで鼻や口を触ることが少なくなれば、手についた飛沫による感染が予防できるかもしれない。
感染に関わる病態生理、メカニズムをひとつに絞って取り上げれば、いくらでもウソがつける。
エアロゾルはマスクを通過するという情報は、個々の情報としては間違ってはいない。しかし、感染予防全体の中でどういう効果をもたらしているかは、この情報だけでは決してわからない。個々の因果モデルをいくら積み重ねたところで、全体像が見えてくることはない。予防効果全体という視点で見た時に、マスクをつけている人とつけていない人で、それぞれの感染率がどう異なるかという情報がどうしても必要だ。疫学的、統計学的な情報ということである。しかし、その統計学的情報にもさまざまな問題がある。そういう意味では、病態生理やメカニズムの情報はダメで、統計学的情報ならよいということではない。
次回からは、主に医学に関する統計学的情報の正しさ、統計学的情報の問題点について、しばらくの間、取り上げていく。