著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「メタ分析」が最良のエビデンスとは限らない…出版バイアスと異質性バイアス

公開日: 更新日:

 この異質性バイアスについては論文中にも記載がある。マスクの効果を検討した研究は、手術用マスクであったり、N95マスクであったり、あるいは布マスクであったり、さまざまなものが使われており、それぞれの効果には違いがあることが予想される。にもかかわらず、それを一緒に解析しているという限界がある。あるいはそれぞれの研究で実際のマスク着用率が異なっており、ここにもバイアスの可能性が存在する。

 統合された効果は、布マスクの効果の小ささや、実際の着用率の低さによって過小評価されている可能性もあり、サージカルマスクやN95マスクで、常時着用するような状況では、もっと大きな効果が期待できるかもしれないのである。そうした場合、手術マスクだけの研究での分析、N95マスクだけでの分析などを行うことで対処できる面があるが、そうした解析をするためにはまだ研究が不足しており、この論文では検討されていない。

 バイアスは効果を過大評価したり、過小評価したり、どちらの方向にも働く。

 ここでは出版バイアスはどちらかというと効果を過大評価する方向に働き、異質性バイアスは過小評価する方向で働いているように考えられる。そうなると、全体としてこの研究のバイアスは、治療効果を過大評価しているのか過小評価しているのか、はっきりしない。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 2

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  3. 3

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  4. 4

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした

  2. 7

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  3. 8

    巨人は国内助っ人から見向きもされない球団に 天敵デュプランティエさえDeNA入り決定的

  4. 9

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 10

    佐藤輝明はWBC落選か? 大谷ジャパン30人は空前絶後の大混戦「沢村賞右腕・伊藤大海も保証なし」