「メタ分析」が最良のエビデンスとは限らない…出版バイアスと異質性バイアス
この異質性バイアスについては論文中にも記載がある。マスクの効果を検討した研究は、手術用マスクであったり、N95マスクであったり、あるいは布マスクであったり、さまざまなものが使われており、それぞれの効果には違いがあることが予想される。にもかかわらず、それを一緒に解析しているという限界がある。あるいはそれぞれの研究で実際のマスク着用率が異なっており、ここにもバイアスの可能性が存在する。
統合された効果は、布マスクの効果の小ささや、実際の着用率の低さによって過小評価されている可能性もあり、サージカルマスクやN95マスクで、常時着用するような状況では、もっと大きな効果が期待できるかもしれないのである。そうした場合、手術マスクだけの研究での分析、N95マスクだけでの分析などを行うことで対処できる面があるが、そうした解析をするためにはまだ研究が不足しており、この論文では検討されていない。
バイアスは効果を過大評価したり、過小評価したり、どちらの方向にも働く。
ここでは出版バイアスはどちらかというと効果を過大評価する方向に働き、異質性バイアスは過小評価する方向で働いているように考えられる。そうなると、全体としてこの研究のバイアスは、治療効果を過大評価しているのか過小評価しているのか、はっきりしない。