【抗菌薬の長期投与】耐性菌だけでなく副作用や体内蓄積にも注意が必要
多くの感染症では、耐性菌発生の観点からも同じ抗菌薬を2週間以上継続することは避けられる場合が多いです。しかし、結核など一部の感染症では抗菌薬を長期間継続しなければ治癒しないことも知られています。このように抗菌薬の長期投与が必要な感染症として真っ先に思い浮かぶのが「感染性心内膜炎」です。
感染性心内膜炎については以前の当連載で「不明熱の原因のひとつ」として取り上げました。自覚症状は発熱以外に倦怠感や食欲不振、体重減少などさまざまですが、ずっと下がらない熱、なんとなくだるい……などといった症状が長期に続く場合は注意が必要です。
感染性心内膜炎に対する抗菌薬の治療期間は、原因菌の種類や、感染を起こした心臓の弁が自己弁か人工弁かによっても異なりますが、いったん心臓の弁膜上に細菌が感染すると除菌するのが難しく、高用量の抗菌薬(多くは注射薬)を1カ月以上継続投与することが一般的です。また、原因菌によっては抗菌薬の併用も必要になるケースがあります。
ただ抗菌薬の長期投与は、耐性菌発生の観点以外にも注意点が多く出てきます。たとえば、感染性心内膜炎の原因菌のひとつとして知られている「MRSA」(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)です。MRSAの治療薬であるリネゾリドは投与期間が2週間を超えると血小板減少など血球系の副作用を起こしやすくなるのです。このため感染性心内膜炎の第1選択薬としては推奨されていません。