糖尿病の人が正しく歩くには柔軟なアキレス腱が必要になる
原島史哉(下北沢病院リハビリテーション科理学療法士)
人は歩く時、かかとから着地すると同時に足の指先をそらせ、足の外側(小指側)の柔らかい部分から親指の付け根に重心を移動させ、足の指先を蹴って前に進みます。
糖尿病で神経障害が出ている人は足先から筋肉が萎縮し、筋肉量が低下していきます。足底にかかる圧力を軽減する筋肉、足の指先を動かす筋肉などが衰えるのです。その結果、足の指が変形し、歩幅が狭くなるなど歩き方も変わってしまいます。
歩行にはアキレス腱の柔軟性が重要です。それが失われると、かかとへの衝撃が強くなったり、土踏まずのアーチを支える力が弱くなるだけでなく、足先をそらせるなどの動きが弱くなる。すると、足底にかかる圧力の場所が変わり、足の裏にタコやいぼができてケガをしやすくなるのです。
重度の糖尿病の患者さんの中には足裏を内側に向けて小指側だけを接地させて歩く人がいます。それは、かかとの向きを変える動きに大きく関わる距骨下関節に問題が起こるからです。
誰でも年を取るとアキレス腱は硬くなり、足首の可動域が狭くなっていきます。糖尿病の人は特にその傾向が強い。そのため糖尿病の人にはアキレス腱のストレッチをするよう、指導しています。具体的には立った状態から片方の足を後ろに下げて20秒程度停止し、反動をつけずに戻します。これを1度につき左右10~20回を1日2~3セットするとよいでしょう。