疲労の謎がここまで分かった(4)見えてきた新型コロナ後遺症の治療薬…アセチルコリンを補充
これまで、疲労は「生理的疲労」と「病的疲労」の2種類に大別されると説明してきました。
慢性疲労症候群、うつ病、新型コロナ後遺症──などの「病的疲労」は、強い疲労感が長期間続き、1日休めば回復するような「生理的疲労」とは、まったく違うものです。苦しまれている患者も多く、一日も早い新薬の開発が求められています。
「病的疲労」と「生理的疲労」の違いは、脳内で炎症が起きているかどうかです。なぜ、新型コロナ後遺症などの「病的疲労」では、脳内炎症が生じているのでしょうか。
われわれは、マウスの実験によって、脳内で「アセチルコリン」という神経伝達物質が不足していることを発見しました。アセチルコリンを増やすと、脳内炎症が抑制され、倦怠感やうつ症状もなくなりました。脳内炎症の原因は、アセチルコリンの不足だったということです。
アセチルコリンには、抗炎症作用があります。平たくいうと、アセチルコリンの不足は、火がついているのに、脳に備え付けられている「消火器」が故障しているような状況というわけです。