著者のコラム一覧
近藤一博東京慈恵会医科大教授

大阪大医学部卒。近著「疲労とはなにか」(講談社)

疲労の謎がここまで分かった(4)見えてきた新型コロナ後遺症の治療薬…アセチルコリンを補充

公開日: 更新日:

 これは、アセチルコリンを補うことが、「病的疲労」からの回復につながる可能性があるということです。実は、マウスの実験をした時、脳内のアセチルコリン不足を解消するために使った「ドネペジル」(商品名アリセプト)という薬は、すでに認知症治療薬として使用されています。

 これらのことから、新型コロナウイルス感染後に倦怠感を訴える患者に、比較的早い時期にドネペジルを投与すれば新型コロナ後遺症にならず、後遺症になっていても、早期であれば治療効果が見込めるのではないかと期待されています。

 ドネペジルについては、すでに公的研究費による「新型コロナ後遺症に対するドネペジルの第2相の治験」が、2022年度~23年度の予定で行われています。この実験が成功すれば、新型コロナ後遺症の治療薬が手に入ることになります。また、抗うつ薬としてのドネペジルの利用にも見通しがつくはずです。

 これまで脳の炎症のメカニズムに関しては、炎症を増加させる「アクセル」の働きばかりが注目されてきました。治療薬の開発も、アクセルをどのようにして緩めるかに注力されてきました。しかし実際は、炎症を停止させる「ブレーキ」に注目する必要があったのです。

 今後、ブレーキの故障の原因を見いだしたり、ブレーキを強化する薬剤を開発できれば、疲労に関する多くの疾患を原因から解決することができるはずです。 (おわり)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇