【ガス壊疽】急速に進展し治療しても8人に1人は死に至る
前回、発症早期では蜂窩(ほうか)織炎との鑑別が難しい疾患として壊死(えし)性筋膜炎やガス壊疽(えそ)があるとお話ししました。今回は「ガス壊疽」を取り上げます。
ガス壊疽も壊死性筋膜炎と同様に急速に進展する非常に厄介な疾患です。原因菌としては、クロストリジウム属などの嫌気性細菌により発症するケースが多いといわれていますが、腸内細菌などの一般細菌によっても発症することがあります。
嫌気性細菌は空気のないところで繁殖する特徴があります。同じクロストリジウム属の細菌としては食中毒で有名なボツリヌス菌や、外傷などが原因となって発症することが多い破傷風菌などがよく知られています。
クロストリジウム属の細菌は土壌にも存在していて、交通外傷などもガス壊疽の原因になります。多くの場合、皮膚が損傷した際にこれら細菌に感染し、低酸素環境下において細菌が増殖。メタンや二酸化炭素などのガスを産生します。皮膚の下にガスがたまると、傷の周囲で強い痛みを伴う赤い腫れが急激に現れ、すぐに悪化していきます。その後、大きな水ぶくれとなり、茶褐色または血の混じった分泌物が多く出て、腐敗臭やドブのような臭いを発します。