著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

利尿薬が使われる高血圧・心不全・肝硬変には共通点がある

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「肝硬変」も挙げられます。肝臓ではタンパク質が作られていて、肝硬変になると作られるタンパク質の量が減ります。タンパク質は血液の濃度を構成している成分のひとつなので、肝硬変の人は血液が維持できる水の量が少なくなってしまいます。肝硬変も心不全と同様に水が血管内から手や足に移動してくると浮腫が生じます。また、肝硬変に特徴的な症状のひとつに腹水がありますが、これもやはり水がお腹の中(腹腔)にたまることで起こる症状です。

 さて、みなさんお気づきでしょうか? 高血圧も心不全も肝硬変も、いずれも「塩分制限」が必要な病態だということに。医療における塩分制限は、正確にはナトリウム制限です。つまり、塩に含まれるナトリウムは、体の中の水分に関して非常に重要な役割を持っているということになります。そう考えると、ナトリウムの再吸収を抑制して水を尿として体の外に出す「ナトリウム利尿」で尿の量を増やす利尿薬の効き方にも納得してもらえるのではないでしょうか。

 一方、「水利尿」で尿の量を増やすトルバプタンも、心不全や肝硬変に用いられます(高血圧には使えません)が、原則、他のナトリウム利尿の利尿薬で十分に治療されている人にしか使うことができません。トルバプタン単独では使えないのです。つまり、トルバプタンは他の利尿薬で出し切れなかった水分を尿として出すクスリなので、それだけ厳密に水の管理が必要な人に用いられます。

 次回は、利尿薬を使っているときに注意すべき点について紹介します。

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