著者のコラム一覧
石原藤樹「北品川藤クリニック」院長

信州大学医学部医学科大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

「動脈硬化」はがんの一種? 治療が難しいのもそのためではないのか

公開日: 更新日:

 「動脈硬化」は変性したコレステロールが動脈の壁に沈着し、それがプラークという塊になると説明されています。しかし、その正確な仕組みについては、まだ不明な点が多いのが実際です。コレステロールの値が高いだけでは、動脈硬化が起こることの説明にはならないのです。

 それでは何が動脈硬化の原因なのでしょうか? ひとつ考えられているのは「炎症」の関与です。血管の壁が傷ついてそこに炎症が起こると、炎症細胞が集まって動脈硬化が進行するのです。感染症の原因となる細菌やウイルスが、動脈硬化に影響しているという説もあります。動脈硬化の病変の中には、コレステロールや炎症細胞以外にも多くの細胞が含まれています。

 最近注目されているのが、血管の壁の中にある平滑筋細胞という筋肉の細胞の変化です。今年の循環器疾患の専門誌に、動脈硬化を形成する筋肉細胞の変化を分析した論文が掲載されています。それによると、動脈硬化に関連する平滑筋細胞には、がんに非常によく似た遺伝子の変化が起きていて、実際にその細胞は制御不能で増殖し死ぬことがないなど、がん細胞にとても良く似た性質を持っていることが明らかになりました。

 つまり、動脈硬化はがんの一種で、それが進行して制御が難しいのは、がんに近い性質を持っているからかもしれないのです。動脈硬化の治療は、これから大きく変わることになるのかもしれません。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 4

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  5. 5

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  1. 6

    巨人が助っ人左腕ケイ争奪戦に殴り込み…メジャー含む“四つ巴”のマネーゲーム勃発へ

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    支持率8割超でも選挙に勝てない「高市バブル」の落とし穴…保守王国の首長選で大差ボロ負けの異常事態

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝