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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

低栄養の負のスパイラルをつくらない…不可逆的な状態に至ることも

公開日: 更新日:

 高齢者ではさまざまな理由から、低栄養になりがちです。

 低栄養とは、日本老年医学会によると「摂取エネルギー不足、またはある種の栄養素の摂取不足により、健康上何らかの支障がある状態を低栄養といい、不十分な栄養摂取や不適切な栄養法に起因する慢性的エネルギー摂取不足をマラスムス(marasmus)、比較的急性で主としてタンパク質不足による低栄養状態をクワシオルコル(kwashiorkor)とよぶ」とされています。

 ただ実際は、主にエネルギー不足のマラスムスと、主にタンパク質不足のクワシオルコルの2つの型が混在していることが多く、エネルギー、タンパク質の両方が不足しています。

「さまざまな理由から」と冒頭で触れましたが、それらは身体的要因、社会的要因、精神的要因、その他の要因が絡み合っています。具体的には、加齢や持病などによる食欲不振、嚥下機能・咀嚼機能の低下、入れ歯が合わない、1人暮らしで買い物をしたり料理をしたりする気にならない、孤独感やうつ状態で食に関心が向かない、多剤服用が食欲減退につながっているなど、です。 

 各要因が影響し合い、負のスパイラルを形成します。加齢やその他による食欲不振で食事量が減少すれば、慢性的な低栄養につながり、筋肉量が減少し、基礎代謝が低下し、エネルギー消費が減って、食事量がより減少する。また、筋肉量の減少は活力低下も招き、身体機能低下による活動量が減少、エネルギー消費低下・食事量の減少を一層進行させます。

 日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作(食事、身だしなみ、トイレ、着替え、階段の上り下り、歩行など)をADLといいますが、このADLが低下すると、不可逆的な状態に至ってしまう可能性もあります。高齢者の低栄養は、気がついたらその状態が長期にわたり続いていた、ということもあり得ます。

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