著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

腸内細菌が左右するがん治療効果 がん研究センターが国内初の臨床試験

公開日: 更新日:

 皆さん、腸内細菌をご存じでしょうか。その中には、善玉菌と悪玉菌、中間タイプの3グループがあって、食物繊維を多く含む野菜や、納豆やキムチ、ヨーグルトなどの発酵食品をよく食べると、善玉菌が増え、腸内細菌がよくなるといわれています。

 実は、腸内細菌のよしあしが、がんの治療効果を左右することも分かってきたのです。そうした国内外の研究結果を受けて国立がん研究センターなどのグループは、免疫チェックポイント阻害剤を投与する前に、腸内環境の改善で健康な人の腸内細菌を移植する臨床試験を始めたと発表しました。国内では初めての研究です。

 がん治療と腸内細菌のキッカケは2015年。米シカゴ大の研究チームが、マウスの研究から腸内細菌の違いによって免疫チェックポイント阻害剤の効果が左右されることを発表。腸内細菌の存在そのものが必要なことも、フランスの研究で明らかになりました。こうした研究から、世界中でがん治療と腸内細菌の研究が広がっていったのです。

 前立腺がんをめぐっては、近畿大と大阪大などの研究グループが、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸が前立腺がんの増殖を促進することを解明。大腸がんについては、東大や岡山大などのグループが、腸内細菌が菌外に放出する小胞が大腸がんの発がんに関わっていることを証明しています。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  2. 2

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  5. 5

    ドジャースが村上宗隆獲得へ前のめりか? 大谷翔平が「日本人選手が増えるかも」と意味深発言

  1. 6

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  2. 7

    レーダー照射問題で中国メディアが公開した音声データ「事前に海自に訓練通知」に広がる波紋

  3. 8

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  4. 9

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  5. 10

    巨人が現役ドラフトで獲得「剛腕左腕」松浦慶斗の強みと弱み…他球団編成担当は「魔改造次第」