歯周病菌がもたらす“免疫暴走”で不調が全身に…アルツハイマーや脳梗塞などの原因にも
これまでよりも強く疲労や衰えを感じるようになったり、病気や不調、痛みが悪化したり、種類が増えたりしている人の体内では、一般的なそれとは一線を画した激しい老化が起きています。
輸血により生じるC型肝炎感染の撲滅に貢献し、世界的な評価を得た医学博士・飯沼一茂さんは、それを「倍速老化」と名づけ、その原因を免疫の暴走だと明らかにしました。今後、医学の主役となることが目される免疫の最新知見をまとめた新著『倍速老化』(サンマーク出版)では、免疫の暴走が起こす病気の連鎖についても解説しています。
じつは免疫暴走の端緒の一つとなるのが歯周病で、さらに免疫暴走は加齢臭にも関係します。本書より一部抜粋、再構成してお届けします。
■免疫暴走による病気の連鎖
歯周病は、50歳で男性の70%、女性の60%もの方がかかっていると言われるメジャーな病気ですが、じつは非常に厄介なものです。
最新医学では、歯周病からさまざまな別の病気が引き起こされることが確認されています。その例をご紹介しましょう。
歯と歯茎のすき間にある溝「歯周ポケット」に歯垢が溜まると、歯垢の内部に潜む歯周病菌が毒素を出し、その毒素によって歯茎が痛み腫れてきます。この段階は「歯肉炎」と言われており、きちんとケアすればまだ大きな問題はありません。
ところが、これがもう少し進んで歯周「炎」の段階になると、歯周病菌が少しずつ体内へと入ってきます。そうして歯周「病」になると、血液内に歯周病菌がどんどん入り込んでしまうのです。
一般的な細菌なら、血液に入るとすぐ攻撃免疫に始末されるのですが、歯周病菌はもともと歯肉溝液という血液とほぼ同じ成分の液の中にいたことで「耐性」を持っています。そのため血液内でも、わりと生きていられるのです。
こうして生き延びた菌の持つ毒素が血管壁などを傷つけると、攻撃免疫たちがみるみる集まってきて血管壁がふくれあがります。これによって血管が硬くなる動脈硬化が進み、場合によっては心筋梗塞や脳梗塞が起こることもある。
そこまで至らなかったとしても、すでに免疫暴走は起きていますから炎症性サイトカインという「ここでヤバいことが起きているぞ!」という、攻撃免疫を集結させるサインは発令され続けてしまいます。その結果インスリンが効かなくなって、なんと糖尿病になることもあるのです。
また、この炎症性サイトカインは全身を駆け巡り脳にまで至ってしまいますから、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などを引き起こすことも。その一方で、食事の際に誤嚥を起こし歯周病菌が肺のほうに行ってしまうと、誤嚥性肺炎の原因に。