スポーツジャーナリスト谷口源太郎氏「五輪とその周辺はブルシット・ジョブの巣窟です」
谷口源太郎さん(スポーツジャーナリスト/84歳)
東京五輪・パラリンピックの組織委員会で理事を務めた、元電通専務の高橋治之氏が受託収賄容疑で逮捕された。スポンサー選定を巡り、「AOKIホールディングス」から5100万円の賄賂を受け取った疑いだが、これはカネにまみれた「五輪の闇」の一部が明らかになったに過ぎないのではないか。汚職の背景にはなにがあるのか。マネーファーストに堕落した五輪に厳しい目を向け続け、「オリンピックの終わりの始まり」などの著書があるスポーツジャーナリストに話を聞いた。
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──組織委員会の高橋元理事が逮捕された。一報を聞いたときは?
ついに逮捕されたか、という思いと同時に東京五輪の闇がどこまで解明されるか、疑念を抱きました。
──というと?
五輪をはじめスポーツのビッグイベントの裏側を取材する中で、1980年代からさまざまな場面で「高橋治之」という名前は聞いていました。ただ、メディアが報じているような「スポーツビジネスの第一人者」という表の顔ではなく、フィクサーというか裏の顔の部分についてです。昨年の東京五輪・パラリンピックでも招致段階から、高橋元理事が暗躍していた。だから、彼が逮捕されて、五輪スポンサーに関するAOKIからの5100万円の受託収賄では終わらない、終わらせてはいけない、とすぐに思った。逮捕にあたり、高橋元理事の自宅や彼が代表を務めるコンサルタント会社の「コモンズ」、贈賄側のAOKIはもちろん、電通や解散した組織委員会の清算法人に家宅捜索が入った。招致をめぐる買収疑惑や政界まで捜査が及ぶとすれば、大きな五輪汚職事件につながる。単なる一スポンサーとの贈収賄事件に矮小化してはいけません。