大谷翔平メジャー開幕後も“全開二刀流”の代償…「息切れは時間の問題」と識者が警鐘
WBCで状態はピーク
大谷は先のWBCで球速164キロを2度マーク、しかも雄たけびを上げながらの投球だった。心身ともエンジン全開だったからだろう。「WBC決勝から中2日でマイナー相手に調整登板した際には、あえて8割程度に抑えているように見えた。張り詰めた心身を一度、ほぐすのかと思ったけど、依然として開幕からアクセルを目いっぱい、踏み続けている」(特派員のひとり)という。
大リーグに詳しいスポーツライターの友成那智氏がこう言った。
「6日のマリナーズ戦はマウンド上で肩で息をしているシーンもありました。これはピッチクロック(投球間隔制限)に対応するため、投げ急いだこともあるのでしょうが、WBCに向けて急ピッチで調整を進めたことも決して無関係ではないと思う。今季はただでさえ、WBCに出場して通常よりも約1カ月早く開幕を迎えたようなものです。エ軍の先発陣はWBCメキシコ代表で好投したサンドバル、ドジャースから移籍のアンダーソン、昨季、無安打無得点を達成したデトマースが好スタートを切り、6番手まで揃っています。大谷同様、侍ジャパンに名を連ねたパドレスのダルはレギュラーシーズンの登板を遅らせたように、大谷は開幕からの疲労が出始める5月以降にローテを2回飛ばすなど、一度休みを与えた方がチームにとっても、大谷にとっても得策ではないか」
■後半戦失速は顕著
投打の二刀流をこなす大谷はただでさえ消耗が激しいため、終盤戦での失速が目立つ。特に投手として顕著で、過去2年を見ると防御率は後半戦に改善するものの、奪三振率は21年が前半戦11.7から後半戦9.8、22年が前半12.7から後半10.9と、いずれも低下。1イニング当たりに許した走者の数を示すWHIPは21年こそ後半戦に向上したが、昨季は前半戦の0.989から1.038に悪化した。奪三振率、WHIPとも、メジャートップレベルの数字を残しているとはいえ、球宴を挟んでパフォーマンスは落ちているのだ。
「依然としてリリーフ陣の力量は不透明なものの、球団はオフの間に、投打ともそれなりに補強を行い、14年以来9年ぶりのポストシーズン進出を視野に入れています。当然、投打とも大谷への依存度は昨季以上に高くなりますが、このまま100球近く投げる試合が続くようなら、いくら大谷であっても息切れするのは時間の問題でしょう。今季終了後にはFAとなり、史上最高額での契約が見込まれるだけに、大谷本人も『結果を残さなければならない』という重圧を感じているはずです。彼の性格からして自分から休むと言い出すのは考えにくいことですが、チームも本人も『勝負は後半戦』と割り切って、これまで同様、前半戦はスローペースにすべきだと思う」(前出の友成氏)
今季は2年連続投打の規定数クリアに加え、史上初のサイ・ヤング賞と本塁打王の同時受賞に、2年ぶり2度目のMVP選出が期待されている。
未体験ゾーンをクリアできれば、偉業達成も見えてきそうだが。