本の森
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「巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ」竹内早希子著
「巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ」竹内早希子著 醤油、味噌、酒といった伝統的な調味料に欠かせないのが日本独特の巨大な木桶だ。木桶の板は多孔質で目に見えない小さな穴がたくさん開…
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「死者は生者のなかに ホロコーストの考古学」西成彦著
「死者は生者のなかに ホロコーストの考古学」西成彦著 比較文学者である著者は、ポーランド文学、イディッシュ文学にも精通、必然的にホロコースト文学に強い関心を示してきた。本書の「序」には1996…
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「メタモルフォーゼの哲学」エマヌエーレ・コッチャ著 松葉類、宇佐美達朗訳
夢野久作の「ドグラ・マグラ」の中に「胎児の夢」という挿話が出てくる。ヒトの胎児は、母親の子宮内にいる間に、単細胞から多細胞、魚類から爬虫類、そしてサルからヒトへという変化を遂げているのだと。これはヘ…
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「オーウェルの薔薇」レベッカ・ソルニット著 川端康雄、ハーン小路恭子訳
「1936年春のこと、1人の作家が薔薇を植えた」という印象的なフレーズで始まる。「作家」とはジョージ・オーウェル。そう、トランプ政権の誕生、パンデミックの襲来、ロシアのウクライナ侵攻といった不可測な事…
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「街の牧師 祈りといのち」 沼田和也著
「宗教年鑑 令和3(2021)年版」によると「キリスト教系」に分類される宗教団体の総信者数は191万余人で、全宗教団体の総信者数に占める割合は1.06%。思いのほか少ないが、カトリック、プロテスタント…
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「死者と生きる」デルフィーヌ・オルヴィルール著 臼井美子訳
コロナ禍においては、葬儀の形式も変化した。2020年には家族葬が40.9%、一般葬は48.9%だったのが、22年には家族葬が55.7%、一般葬が25.9%と一般葬が半減した。 フランスでわず…
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「わたしのペンは鳥の翼」 アフガニスタンの女性作家たち著 古屋美登里訳
2021年8月、タリバンが首都カブールを制圧、国外へ逃れようとする人々で混乱を来すカブール国際空港の模様は記憶に新しい。タリバン政権による女性の就労や教育の権利制限は問題視されているが、それ以前から…
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「オスとは何で、メスとは何か?」諸橋憲一郎著
かつて野坂昭如が「男と女のあいだには深くて暗い河がある」と歌っていたが、生物の性研究の分野でも、最近までオスの対極にメスを置き、「対極に配置したオスとメスの間に深い境界を設けて、生物の雌雄を位置づけ…
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「蛇と梯子」セリーナ・トッド著 近藤康裕訳
「ゆりかごから墓場まで」は第2次世界大戦後の労働党政権による完全雇用の導入と福祉国家の拡大を示すスローガンだ。中等教育の無償化もそのひとつで、教育の平等を導入することで階級間の社会的流動性を促そうとい…
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「切り裂きジャックに殺されたのは誰か」ハリー・ルーベンホールド著 篠儀直子訳
イギリス史上最悪の犯罪とされる切り裂きジャック事件。この19世紀末に起きた連続殺害事件には「売春婦殺し」という文言が常に冠されてきた。 しかし、公式認定された5人の被害者のうち3人は売春婦だ…
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「大奥御用商人とその一族」畑尚子著
今年の大河は松本潤主演の「どうする家康」。家康を祖とする江戸幕府はその後260年余の長きにわたり続く。全15代の将軍の中でもっとも長く在職したのは第11代の家斉で、およそ50年の在位期間に50人の子…
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「製本屋と詩人」イジー・ヴォルケル著、大沼有子訳
20世紀のチェコの作家といえば、「ロボット」という言葉の生みの親で「山椒魚戦争」など痛烈な風刺作品で知られるカレル・チャペック、オーストリア支配下のチェコを舞台にした反戦風刺小説の傑作「兵士シュヴェ…
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「『死んだふり』で生きのびる」宮竹貴久著
英語で死んだふりはplaying possum。ポッサムは有袋類のオポッサムのことで、ネットでもその見事な「死んだふり」ぶりを見ることができる。ニワトリやカエルの死んだふりも有名で、生き物全般でも死…
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「時計遺伝子 からだの中の『時間』の正体」 岡村均著
夜になれば自然と眠くなり、朝になれば自然と目覚める。これは、暗くなったから寝る、明るくなったから起きるという外の環境の変化の結果のように思えるが、そうではない。実は、我々の体の中にはすでに1日24時…
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「サイレント・アース 昆虫たちの『沈黙の春』」デイヴ・グールソン著 藤原多伽夫訳
2000年ごろから地質年代の新しい区分として「アントロポセン(人新世)」という言葉が提唱されるようになった。人間の活動が地質環境に大きな影響を与えている時代のことだが、著者はその特徴のひとつに生物多…
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「ひとかけらの木片が教えてくれること 木材×科学×歴史」 田鶴寿弥子著
「木材解剖学」とは耳なじみのない言葉だが、日本ではすでに100年以上の歴史を持つ学問で、国際木材解剖学会の会員数では現在日本人会員が第2位を占めるなど、研究者も増加しているという。われわれの身の回りに…
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「非暴力の力」ジュディス・バトラー著、佐藤嘉幸、清水知子訳
先頃、政府は来年度から防衛費の大幅増額を検討すると発表した。台湾問題をめぐる米中の対立などを踏まえての防衛・抑止の強化が理由とされている。ロシアのウクライナへの武力侵攻もあって「国防」に対する関心が…
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「歴史の中の多様な『性』」三橋順子著
近年、性的マイノリティーの人権運動の波が日本にも及び、LGBTや多様性(ダイバーシティー)といった言葉が頻出するようになり、社会的なテーマとなってきた。こうした動きは日本の性的多様性に対する考え方が…
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「世界は五反田から始まった」星野博美著
「故郷は?」と聞かれ、生まれたのは○○だけど育ったのは××……と答えに迷う人も多いだろう。では生まれも育ちも同じなら問題ないかというと、そうでもない。 東京・品川区の戸越銀座に生まれ育った著者…
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「月経の人類学」杉田映理、新本万里子編
近年、発展途上国への支援のひとつにMHM(月経衛生対処)推進が大きな課題となっている。MHMとは、女性および思春期の女子が困難なく衛生的な月経処理ができることだ。つまりは、処理が困難な人たちが数多く…