孤独のキネマ
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「実録外伝 大阪電撃作戦」陸軍に学んだ山口組の侵略戦争
1960年に大阪で起きた明友会事件を映画化。タイトルの「電撃作戦」は山口組がわずか2週間で明友会を壊滅させたことを意味する。 ヤクザ組織が群立する大阪に1000人の勢力を自称する愚連隊組織の…
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「恐怖のメロディ」じわじわ迫るストーカー女の“狂人化”
クリント・イーストウッド(88)が65歳下の女性と交際中と報じられた。女性はミック・ジャガーの元カノだとか。“イーストウッドと女”で思い出したのが本作。彼の初監督作品だ。 ラジオのDJを務め…
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「尼僧ヨアンナ」尼僧院の悪魔払いで描く愛欲と狂気の相克
カンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞。尼僧院での悪魔払いを描いた。 17世紀のポーランドの寒村にスリン神父(ミェチスワフ・ヴォイト)が到着した。彼の使命はこの地の尼僧長を務めるヨアンナ(ルツィ…
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「ゴッドファーザー PARTⅡ」戦国時代と被るマフィア抗争
「ゴッドファーザー」(1972年)の続編でロバート・デ・ニーロの出世作。「PART Ⅱ」という言葉は本作から広まった。続編も高評価を受けた映画はこれが初めてといっていい。 前作で父ビトー・コル…
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「夜行列車」揺れ動く女の情念とうなだれた後ろ姿が見もの
「尼僧ヨアンナ」(1961年)でカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞したカヴァレロヴィッチ監督の代表作のひとつ。ポーランド版女性映画だ。 ポーランド中心部からバルト海に向かう夜行列車に人々が乗り…
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密閉空間で襲いかかる「エイリアン」は最強のモンスター
公開から40年。誰もが一度は見たことがあるだろう。 西暦2122年、宇宙貨物船が知的生命体からの信号を感知して3人のクルーが未知の惑星を調査、宇宙人の化石を発見する。生命体の卵を調べていたケ…
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「女が愛して憎むとき」若尾文子と田村二郎にみる男女の業
「女が階段を上る時」(60年、成瀬巳喜男監督)で銀座の女を描いた脚本家の菊島隆三が舞台を大阪に移した作品。 北新地でバーを営む敏子(若尾文子)は美人ママとして評判を呼び、客は敏子に男がいるので…
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「山桜」にみる“運命の出会いまで結婚は繰り返す”の教訓
藤沢周平の時代小説を映画化。 北国の小藩に暮らす野江(田中麗奈)は夫に先立たれ、今は磯村という武家に嫁いでいる。この家の義父は貸金を営んで苛烈な取り立てをする上に、重臣の諏訪に取り入って私腹…
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ロシアの“最先端ロボット”より笑える「ロボジー」の頑固爺
先週、ロシアで起きた騒動には笑った。子ども向け科学イベントに登場したロボットが、実は人間が入った着ぐるみだったのだ。本作はロボットに入った老人が周囲を右往左往させるコメディー。ミッキー・カーチスが五…
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人の使命感を描くも…「最後の忠臣蔵」ラストの切腹に疑問
14日は赤穂浪士の討ち入りの日。元禄15(1702)年のこの日、大石内蔵助ら四十七士が吉良上野介を討ち果たした。本作は生き残った赤穂侍の物語。池宮彰一郎の小説を映画化した。 討ち入りから16…
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代表作「ラストエンペラー」でB・ベルトルッチ監督を悼む
先週死去したB・ベルトルッチ監督の代表作。アカデミー賞の9部門を受賞した。 ストーリーの解説は必要ないだろう。「清朝最後の皇帝」と呼ばれる愛新覚羅溥儀(ジョン・ローン)が2歳で皇帝に即位し、…
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「ディア・ハンター」ロシアンルーレットを楽しむベトコン
アカデミー賞5部門を獲得。12月14日(金)から4Kデジタル修復版が全国公開される。 ストーリーはご存じの通り。ペンシルベニア州の田舎町に住むロシア系移民のマイケル(ロバート・デ・ニーロ)が…
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「JFK」ケネディ暗殺の“陰謀論” 犯人はオズワルドなのか?
明日は11月22日。「いい夫婦の日」だが、ある人物の命日でもある。55年前、ケネディ大統領が暗殺された。本作は暗殺が陰謀だったとするギャリソン検事の捜査を描いている。 1963年のこの日、ケ…
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「男と女」大人の心を打つ60年代の一途なメンタリティー
作曲家のフランシス・レイ(86)が死去した。本作は彼の出世作だ。 カーレーサーのジャン(ジャン・ルイ・トランティニャン)は息子を寄宿舎に送り届けた帰り道、アンヌ(アヌーク・エーメ)という女性…
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「雁の寺」はミステリー映画 虐待坊主はどこに消えたのか
原作は水上勉の直木賞受賞作。寺に預けられてつらい思いをした実体験をもとにしている。 1933(昭和8)年、京都の寺「孤峯庵」の住職・慈海(三島雅夫)は画家の愛人だった里子(若尾文子)を内縁の…
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「暗殺のオペラ」ムッソリーニと戦った亡父は誰に殺された
B・ベルトルッチの29歳の意欲作。先週、2K修復版ブルーレイが発売された。 イタリア北部の町「タラ」の駅にアトス・マニャーニ(ジュリオ・ブロージ)という青年が降り立った。アトスは亡き父の名で…
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いまだに議論される「シェーン」 ヒーローは死んだのか?
アラン・ラッドの名作。別れのシーンで有名だ。 ワイオミングの開拓地を訪れたガンマンのシェーン(A・ラッド)はスターレット(バン・ヘフリン)と出会い、農作業を手伝うことに。この地にはライカー兄…
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「駅 STATION」高倉健と3人の女が織りなす別れのドラマ
結末を知っていても感動できる映画がある。本作もそうした一本。倉本聰が高倉健の50歳の記念として脚本を書いた。1968~80年の12年間の物語だ。 北海道警の刑事・三上(高倉健)は射撃の五輪選…
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「レザボア・ドッグス」拷問と謎解きが交差する“任侠映画”
29歳のタランティーノ監督を世界に知らしめた傑作。香港映画「友は風の彼方に」のパクリだが、ハリウッドに新風を吹き込んだ。 「ミスターホワイト」「ミスターブラウン」など色で呼ばれる6人のギャング…
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「モーリス」 杉田水脈のLGBT差別に通じる同性愛への偏見
杉田水脈(自民党)のLGBT差別論文で「新潮45」が休刊に追い込まれた。そんなおり、本作がKADOKAWAから初めてブルーレイ化された。男の同性愛の物語だ。英国の上流階級の文化と厳格な身分制度が美し…