「尼僧ヨアンナ」尼僧院の悪魔払いで描く愛欲と狂気の相克
1961年 イェジー・カヴァレロヴィッチ監督
カンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞。尼僧院での悪魔払いを描いた。
17世紀のポーランドの寒村にスリン神父(ミェチスワフ・ヴォイト)が到着した。彼の使命はこの地の尼僧長を務めるヨアンナ(ルツィナ・ヴィンニツカ)にとりついた悪魔を退けること。宿屋の人々によると、前任の神父は火刑に処せられ、「豚のように丸焼きにされた」という。
スリン神父はヨアンナと面会して神の道を説くが、彼女は悪魔の言動に豹変して挑発する。尼僧全員を集めて悪魔払いをすると、多くが聖水から逃げ惑う。スリン神父は己の肉体を鞭打ち、ヨアンナから悪魔を追い出そうとしながら、彼女の妖艶さに魅せられるのだった……。
白黒映像の荒涼たる土地に尼僧院と宿屋がぽつんと立ち、聖域と俗世を分離するように火刑柱が残されている。悪魔を内在したヨアンナの動きは上質な前衛舞踏さながら。全編が緻密に構成された作品だ。
ポーランド版「エクソシスト」と呼ばれるが、派手な悪魔は登場しない。カヴァレロヴィッチ監督が「人間の本性を描いた映画にしたかった」「登場人物たちにとりつく悪魔は、彼らの抑圧された愛が表面に現れたもの」と解説したように、人間の性愛が中心テーマ。