大高宏雄の新「日本映画界」最前線
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試合描かず 異色作「アルプススタンドのはしの方」狙いは
いつもと違う夏を多くの人がいろいろな思いを抱きながら過ごしている。思いの中身は人によって異なるだろうが、甲子園の高校野球を楽しみにしていた方々は多かったに違いない。もっか関係者のみが客席から試合を見…
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映画賞はNO眼中?「今日から俺は!!劇場版」白々しさが潔い
ある映画を見て、「潔いな」という印象をもった。すでに興収20億円を超えて大ヒット中の「今日から俺は!!劇場版」のことだ。問題作として社会に切り込む意図などさらさらない。マスコミ、評論家受けは狙わず、…
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「ランボー」新作不運…ジブリ旧作トップ3独占のからくり
スタジオジブリの過去作品が、週末の興行ランキング(興行通信社発表)で上位3本を占めたことが評判になった。それも2週連続である。このコロナ禍のなか、新作を押さえたジブリの強さを改めて知らしめたのだが、…
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話題作「なぜ君は総理大臣になれないのか」描く僅かな希望
少し驚いた。都内・有楽町のミニシアターに赴くと、半分近く座席が埋まっているではないか。座席は1席ずつ空けてチケットを販売しており、実質的にはほぼ満席といっていい。見に行った作品は「なぜ君は総理大臣に…
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深作欣二監督作「復活の日」40年ぶりリバイバル上映の意義
多くの映画館が営業を再開してうれしいが、強力な新作がまだ登場していない。だから、どこも苦しい興行が続いている。旧作も多い。番組が埋められないからだ。ただ映画ファンにとってはもう一度、あるいは初めて映…
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「わたしの若草物語」新作公開の英断 配給会社の狙いは?
映画館が営業を再開し始めた。このまま順調にいき「東京アラート」が出なければ、6月以降、全国の映画館のほぼすべてで再開の見通しが立つという。うれしい限りだが、不安もある。複雑な心境だ。観客の方々に対す…
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今こそ邦画史上最もエキサイティングな増村保造監督作品を
新型コロナウイルスに関する報道や情報に、いささかうんざりしている人も多いことと思う。もちろん、重要なニュースもあるが、どうでもいいようなコメントを拾ったネットメディアが横行すると、もういけない。疲れ…
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日プロ大賞発表 2010年代ベストワンは「ハッピーアワー」
筆者が主宰している映画賞、第29回「日本映画プロフェッショナル大賞(日プロ大賞)」が決まったので、この場をもって発表する。 日プロ大賞は、とくに独立系の邦画により強くスポットをあてることを主…
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全国で1ケタ台…緊急事態宣言で上映館数激減の本当の怖さ
緊急事態宣言が全国に及んで以降、首都圏や関西圏中心だった映画館の休業が、ついに全国的な規模にまで広がることになった。休業する数は先週から一気に増えていたが、何とか営業を続けていた映画館も今週末にかけ…
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“経験ゼロ”の大林宣彦監督はなぜ商業映画デビューできた?
大林宣彦監督が亡くなって、一週間が過ぎた。この間、多くの報道が出て、今もその功績が多方面から論じられている。 CMクリエーター、自主映画作家を経て、いきなり商業映画に進出した稀有な経歴をもつ…
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コロナ禍で苦境の映画界…ミニシアター館長が明かす胸の内
東京など7都府県に緊急事態宣言が出たことで、週末(土・日曜)に営業を停止していた都内をはじめとする多くの映画館は4月8日から長期の休業に入った。これでますます、映画館の窮状が続くだろう。 す…
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追悼・松田政男さん 求められる“日付のある映画評”とは
映画評論家の松田政男さんが、3月17日に亡くなった。享年87。筆者が、もっとも影響を受けた映画評論家のひとりだ。それは反権力を貫いた執筆活動が、学生運動が活発化した政治の季節のただ中で鋭利な刃のよう…
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終戦75年の節目に朗報 戦時下描くNHK「太陽の子」に期待を
気になって仕方なかった。今年は終戦から75年が経つ。その節目の年に合わせた戦争映画が、邦画大手になかったからだ。なぜか。戦争映画に対する製作者や監督たちの熱意が下がっているのではないか。加えて、今で…
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佐藤浩市主演「Fukushima 50」はなぜ賛否両論を呼ぶのか?
賛否両論が出るのは分かっていた。公開されたばかりの「Fukushima 50」だ。しかも、賛否の振り幅がやけに大きい。大ざっぱに、原発問題に深く迫れない浅い中身というのが低評価の理由だろうか。プロの…
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「ドラえもん」公開延期…コロナ禍で先の見えない厳しい春
新型コロナウイルスの感染拡大は、映画界にも広く影響を及ぼしている。公開作品の上映延期と映画館の臨時休館、プロモーション絡みのイベントや試写会などの延期、休止である。具体的な上映延期作品は、先週に「映…
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ダークホース的映画「ミッドサマー」なぜか若い女性が支持
全く不思議な現象だというべきか。20代から30代の女性中心に、ある米映画がヒットしている。「ミッドサマー」(ファントム・フィルム配給)という作品で、ホラーともサスペンスともつかない筋書きながら、身の…
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春興行に暗雲…若者少ない&新型肺炎で前年同月比90%割れ
今年に入り、映画興行が振るわない。昨年の記録的な成績が嘘のようである。1月は昨年同月比実績(興収)の90%を切るシネコンも多かった。作品的には1月以降の公開では、今のところ興収10億円超えが2本のみ…
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「パラサイト」アカデミー作品賞の快挙…日本映画の未来は
韓国映画の「パラサイト 半地下の家族」がアカデミー賞の作品賞を受賞した。外国語(非英語)の映画が、作品賞を取るのは初の快挙である。 理由はいろいろ詮索できる。賞を選出するアカデミー会員の非白…
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52年後の映画「男と女」に感じたすがすがしい生命力の正体
日本でも非常に馴染みの深い仏映画の「男と女」(1966年)。その52年後を描いた「男と女 人生最良の日々」を、都内のミニシアターで見てきた。平日でありながら、ほぼ満席状態であったのには驚いた。年配者…
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興収&入場者数盛況も 東宝・ディズニーの2強崩す新機軸を
昨年の映画人口(入場人員)が、前年より2570万人増え、1億9491万人を記録した。今週発表されたのだが、この数字がどの程度かというと、1970年代の初め頃と同じなのである。いわば、50年近く前に戻…