「ドナルド・トランプの危険な兆候」バンディ・リー編、村松太郎訳

公開日: 更新日:

 暴言王と揶揄(やゆ)されるトランプ大統領。その発言や行動はもはや呆れると言って済むレベルではなくなっている。バンディ・リー編、村松太郎訳「ドナルド・トランプの危険な兆候」(岩波書店 2500円+税)では、アメリカの精神科医らがトランプ大統領の精神状態を分析。その危険性を専門的に論じている。

 自分は特別だと信じたがる欲求、いわゆるナルシシズムは、野心的でカリスマ性を持つ人物に多く見られ、一定レベルであれば自信や幸福感につながるものだ。しかしトランプ大統領の場合、これが度を越えて悪質であるという。

 病的ナルシシズムは、ドラッグのように依存性が高く、自分が特別だと感じられるためなら、嘘、ごまかし、裏切り、他者を傷つけることなどもいとわなくなる。そして、そのレベルが最高に達すると、自己愛性パーソナリティー障害へとつながっていく。

 精神疾患に罹患(りかん)していること自体は、指導者としての適格性を損なうものではない。スティーブ・ジョブズにも自己愛性パーソナリティー障害の兆候が見られたが、彼は非常に生産的で、人間関係を十分維持し、怒りの爆発はコントロールされていた。

 だが、精神疾患に自分または他人に対する“危険性”があれば、話は別だ。病的ナルシシズムと政治が組み合わされば、危機は国内外の平和に及ぶ。放置すれば、第3次世界大戦につながる可能性もある。

 アメリカ精神医学会には、精神科医が直接診断していない有名人について意見することを禁止する倫理規範がある。しかし、これに抵触することを覚悟の上で、本書の精神科医たちは警告している。アメリカの良心ともいうべき彼らの発言を、無視することはできない。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  2. 2

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  5. 5

    ドジャースが村上宗隆獲得へ前のめりか? 大谷翔平が「日本人選手が増えるかも」と意味深発言

  1. 6

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  2. 7

    レーダー照射問題で中国メディアが公開した音声データ「事前に海自に訓練通知」に広がる波紋

  3. 8

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  4. 9

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  5. 10

    巨人が現役ドラフトで獲得「剛腕左腕」松浦慶斗の強みと弱み…他球団編成担当は「魔改造次第」