トランプのような男を操るプーチンの能力が浮き彫りに

公開日: 更新日:

「共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ」ルーク・ハーディング著 高取芳彦、米津篤八、井上大剛訳/集英社/2018年3月

 2016年の米大統領選挙にロシア政府がトランプ当選に向けて干渉したのではないかというロシア疑惑は、現下米国における最大の政治問題だ。本書を読むと、トランプにはロシアとの関係で知られたくない事実がたくさんあることがわかる。

<過去四○年間にわたって、トランプが築いた不動産の王国は、モスクワからのブラックマネーの洗濯場としての役割を果たしてきた。旧ソ連の資金が分譲マンションや邸宅に流れ込んでいただけでなく、トランプがアイオワやニューハンプシャーで選挙活動をやっていたときですら、側近たちは念願のモスクワでのタワー建設に向けて、認可と資金援助を得るためにロシア政府と交渉していたのである。/ロイター通信の調査で、ロシア国籍のパスポートを所持する、あるいはロシア国内に住所を持つ、合計六三人の人物が、フロリダにある七つのトランプブランドのビルから、これまでに九八四○万ドル相当の物件を購入していることがあきらかになった>

 トランプがロシアのマフィアとビジネスで深い関係にあったことは、まず間違いない。

 著者のハーディングはこんな事実も明らかにした。

<トランプ・タワーはロシアンマフィアの避難所にもなっていた。ロシア本国では古いタイプのマフィアは、プーチンによって中央集権化した国家にテリトリーを奪われ、かつてシベリアの大地を闊歩していたマンモスがいなくなったのと同じように、徐々にその数を減らしつつあった。だが、ニューヨークであれば、身の安全を確保したうえで、国際的なしのぎができたのである。/ロシアマネーがトランプの収益を押し上げてきたのは間違いない>

 本書から浮かび上がってくるのは、大統領の犯罪というよりも犯罪者が大統領になったのではないかという印象だ。このような人物を最高指導者に選出するような米国の民主主義システム自体に病理が潜んでいると言わざるを得ない。それと同時に、トランプのような人物を巧みに操るロシアのプーチン大統領は類いまれなインテリジェンス能力を持っていることが浮き彫りになる。ロシアは実に怖い国だ。 ★★★(選者・佐藤優)

【連載】週末オススメ本ミシュラン

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  2. 2

    阪神・西勇輝いよいよ崖っぷち…ベテランの矜持すら見せられず大炎上に藤川監督は強権発動

  3. 3

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  4. 4

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  5. 5

    阪神・藤川監督が酔っぱらって口を衝いた打倒巨人「怪気炎」→掲載自粛要請で幻に

  1. 6

    巨人・小林誠司に“再婚相手”見つかった? 阿部監督が思い描く「田中将大復活」への青写真

  2. 7

    早実初等部が慶応幼稚舎に太刀打ちできない「伝統」以外の決定的な差

  3. 8

    「夢の超特急」計画の裏で住民困惑…愛知県春日井市で田んぼ・池・井戸が突然枯れた!

  4. 9

    フジテレビを救うのは経歴ピカピカの社外取締役ではなく“営業の猛者”と呼ばれる女性プロパーか?

  5. 10

    阪神からの戦力外通告「全内幕」…四方八方から《辞めた方が身のためや》と現役続行を反対された