若き日のトランプがロシアに握られた弱み
来週12日、シンガポールで米朝会談が行われようとしている。2016年のアメリカ大統領選挙にロシアが介入し、トランプが司法を妨害してロシアとの関係を隠蔽したのではないかとされる「ロシア疑惑」は一体どうなったのか。ルーク・ハーディング著、高取芳彦他訳「共謀」(集英社 2300円+税)では、イギリス「ガーディアン」紙のモスクワ支局長も務めた著者が、ロシア関係者を含む膨大な取材からその背景に迫っている。
元ロシア連邦軍参謀本部情報総局軍事スパイのヴィクトル・スヴォーロフ氏の証言によれば、KGBはスターリンの時代からソ連に入国するすべての外国人を検査・監視するためインツーリストという旅行会社を経営していたという。そして、野心的で将来有望な若者を気前よくもてなし、“美しい女性のいる楽しいパーティー”などをタダで楽しませた。
スヴォーロフ氏はその目的を「24時間体制で監視し、そこで収集したある種の情報を、将来のために保管しておくこと」だと述べている。つまり、ロシアに感化させるか、金あるいは特殊な性癖などの弱みを握り、役立てる。これが古くから続くロシアのやり方というわけだ。
トランプは1987年7月に初めてモスクワを訪問。自著で「ケタ外れの経験だった」とつづるほどの体験をしている。そして、当時のトランプは外交政策についてほとんど知識がなかったはずだが、帰国からわずか2カ月後、突然アメリカ3大紙に対外防衛政策や国益に関する意見広告を掲載している。
ロシア訪問でトランプに何があったかはもはや知る由もないが、この時に構築された古いパイプを、2016年の大統領選でロシアが利用したと考えられると本書。世界を揺るがすスキャンダルの真相が見えてきそうだ。