「新宗教の現在」いのうえせつこ著/花伝社
もちろん、だましたヤツが悪いのである。しかし、だまされた側がそう言っているだけでは、また、だまされてしまう。
信じるということは、相手に自分を預けてしまうことだと私は思っている。「信じることは美しい」とか、「信じることはいいことだ」といった俗説がはびこる限り、だまされる被害者はいなくならない。
推薦文を頼まれて、ゲラ刷りでこの本を読んで驚いたのは、オウム真理教も統一協会もまだ「生きている!」ということだった。それぞれ、アレフや家庭連合と改称して活動している。なくなってはいないのだ。
信じて後悔しないためには、この本を読まなければならない。
統一協会は1960年代に韓国から日本に上陸し、「原理運動」と言って反共活動を展開した。合同結婚式などでも話題を呼び、80年代には高額な壺などを売りつける「霊感商法」が社会問題となった。
それがなくならず、2015年に「世界平和統一家庭連合」(略称、家庭連合)と名前を変えて存続している。著者がこの統一協会と“再会”したのは、友人に示された「ハッピーFamily講演会」の知らせでだった。
横浜の公立施設で開かれたそれに足を運ぶと、講師が4代前の祖先がいまも海の底で苦しんでいるといった因縁トークをやる。「成仏してもらうためにお布施が必要です」と続けて、多額の献金を要求するのである。著者の手紙がキッカケで、2020年6月27日付の「神奈川新聞」に大きな記事が載った。
霊感商法による被害は2019年でも79件、合計11億円に上っているが、弁護士の吉田正穂がこうコメントしている。
「一般的に行政の施設は開かれる必要があるが、名称変更で(統一協会と)分かりにくいとしても、被害者を多く生んでいる宗教団体の講演会がはじかれないのは問題だ」
統一協会は岸信介や笹川良一、そして児玉誉士夫らに支援されて1968年に「国際勝共連合」を発足させる。その反共のタカ派のDNAは安倍晋三に受け継がれ、現在の菅義偉内閣も「統一協会内閣」だと著者は指弾する。21人の閣僚のうち、以下の9人が統一協会に近いというのである。菅を筆頭に、麻生太郎、武田良太、萩生田光一、岸信夫、加藤勝信、平沢勝栄、小此木八郎、平井卓也。
著者は「日本会議」にも触れ、小池百合子や下村博文、そして橋本聖子を有力メンバーに挙げている。 ★★半(選者・佐高信)