「非常識に生きる」堀江貴文著/小学館集英社プロダクション
この本は、一見、非常識な生き方を勧めるような印象の構成になっているが、内容は指導者に必要とされるヒトとモノとの付き合い方についての定石が記されている。
ヒトとの付き合い方について指導者は大方針だけを決め、後は部下に丸投げすることが重要と堀江氏は説く。
<人を使うときは要所を決めるだけ決めて、変にならない限り干渉せず、丸投げに徹する。それがうまく回っていけば、いい人材によって自然に仕事の質は上がる。自分のやりたいことをやれる時間と機会が、加速度的に増えていくのだ>
これは企業のトップに必要な資質だ。評者の場合、30人以内の戦闘的集団を形成することは得意であるが、それ以上の規模の組織をまとめる資質がない。
丸投げに徹することができず、ときどき仕事の内容を点検するからだ。その結果、能力の高い精鋭集団と他の人々の間の軋轢が強まり、組織としてうまく機能しなくなってしまう。
モノとの付き合い方について堀江氏はこう述べる。
<モノが欲しいというのは、その人にとって有益な情報が、モノに付与されている表れなのだ。便利だったり、快適さを高めてくれたり、新しい出会いを引き寄せたり、ポジティブな効用のある情報を手に入れるチャンスである。みすみす見送ってしまうのは、バカバカしいことだ。/貯金を丸ごと使いきれとは言わないが、些細なブレーキで欲しいモノを我慢してはいけない。/(中略)欲しいモノは、その場で買ってしまおう。優れた情報、または体験を得るチャンスを逃してはいけない。/情報は、狩りにいくものだ。狩猟者の意識でインプットを行い、頭のなかで料理して、アウトプットにつなげる>
堀江氏は、多少値段が高くても新製品を入手することによって、最新の情報を得ようとしているのだ。情報を制する者がビジネスでも政治でも勝利する。
本書を通じて強く受けたのは、時間を効率的に用いることの重要性だ。誰でも1日に与えられているのは24時間だ。この与件の中で、時間を効率的に使うことが競争に勝利するための必要条件であると堀江氏は繰り返し訴えている。 ★★★(選者・佐藤優)
(2021年3月18日脱稿)