著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「過ちの雨が止む」 アレン・エスケンス著 務台夏子訳

公開日: 更新日:

 ジョー・タルボットを主人公とするシリーズの第2作である。前作の「償いの雪が降る」を未読の人は、では無理かなと思うかもしれないので、全然大丈夫だと最初に書いておく。前作が大学生編で、今回が社会人編と考えていただければいい。その前作で何があったのかは、これを読めばだいたいわかるようになっている。

 AP通信の記者となったジョーはいきなりスキャンダルを報じた元議員に訴えられるなどして社会人の洗礼を浴びるが、それどころではないことも勃発。自分と同じ名前の男の死が報じられたのだ。ジョーは幼いころから父親を知らずに育ってきた。知っているのは、名前が自分と同じであるということのみ。ということはこの男が自分の父親なのか。「ろくでもないくそ野郎」だと母親キャシーは言っていたが、その母親とも最近は交流はないのでそれ以上聞くことはできない。

 そこで、現地に調べに行くことになる。ジョー・トーク・タルボットの死には不審な点があり、警察はそれを調べているらしい。トークの妻ジーニー(故人)の父が莫大な財産を残し、それをトークが相続したので、もしもジョーがトークの息子であるならその財産を相続することになる。風雲急を告げるのである。

 ジョーをはじめとするさまざまな人物のドラマもいいけれど、事件の真相が徐々に明らかになる構成が刺激的だ。

(東京創元社 1386円)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…