著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「八月の母」早見和真著

公開日: 更新日:

 すごい小説だ。息苦しくなる小説だ。

 しかし、仕掛けのある小説なので、注意して紹介しないと読者の興をそいでしまうだろう。まず、親の愛に恵まれない美智子という女性の半生が描かれる。これは書いても大丈夫だ。これだけでもたっぷりと読ませるのだが、物語はどんどん進んでいく。美智子が主人公の小説なのかと思っていると、話は美智子の娘エリカに移っていくのだ。友達のいないエリカの少女時代が描かれるのである。えっ、こっちが主人公なの?

 この長編は構成が群を抜いてうまい。たとえば第1部の終わりは、22歳になったエリカが働いている酒場に博司がやってきて、ふたりの関係が始まっていくことになるが、エリカの少女時代から22歳までの間に何があったのか、すぐには語られないのだ。

 そして圧巻の第2部が始まる。困ったことにこの第2部で何が描かれるのか、いっさい書けない。第1部に続いて美智子もエリカも登場することは紹介してもいいけれど、ここで何が起こるかを書くのは厳禁。まさかこんな展開になるなんて思ってもいなかった。

 書くことができるのは、物語がどんどんエスカレートしていくこと。私たちはそれを息をのんで見守ること。最後に新たなヒロインが登場すること、を書くにとどめたい。

 大切なことは、自分の力で立つことだ。隠れヒロインの、その強い覚悟と意志の力に、胸を打たれるのである。

(KADOKAWA 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  3. 3

    大谷の今季投手復帰に暗雲か…ドジャース指揮官が本音ポロリ「我々は彼がDHしかできなくてもいい球団」

  4. 4

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  5. 5

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  1. 6

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  2. 7

    やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目

  3. 8

    女優・佐久間良子さんは86歳でも「病気ひとつないわ」 気晴らしはママ友5人と月1回の麻雀

  4. 9

    カンニング竹山がフジテレビ関与の疑惑を否定も…落語家・立川雲水が「後輩が女を20人集めて…」と暴露

  5. 10

    “下半身醜聞”川﨑春花の「復帰戦」にスポンサーはノーサンキュー? 開幕からナゾの4大会連続欠場