「七十二候を楽しむ 野草図鑑」大海淳著
「七十二候を楽しむ 野草図鑑」大海淳著
今日は、二十四節気の「雨水」、七十二候では「霞始めて靆く」(新暦で2月24~28日ごろ)にあたる。「大地が水分で潤い、霞がたなびいて山の中腹や野山の情景に趣きが感じられる」ゆえそう命名されているらしい。
七十二候とは、旧暦で一年を立春から大寒まで季節の移り変わりごとに分けた「二十四節気」を、さらに細かく5日ごとの「候」に分けて美しい言葉で表したもの。
本書は、それぞれの候のころに旬を迎える植物を選び、紹介しながら、その季節の移ろいを紹介するイラスト図鑑。
「霞始めて靆く」の候で紹介される野草は「明日葉」。セリ科の多年草で、葉を摘み取っても翌日には次の芽が出てくるほど成長力が旺盛なのが名前の由来で、平安時代の医書にも登場するという。
高血圧や動脈硬化の予防に効用がある薬菜として知られ、おひたしや天ぷらなどで賞味される。
変わった楽しみ方としては、冬に結実する果実を粉にしてパンやクッキーに加えたり、浴湯料として利用してもよい。
あと1カ月足らずで迎える「春分」。その末候「雷乃声を発す」(3月30日~4月3日ごろ)で取り上げられるのは「蓬」だ。
ヨモギといえば草餅が真っ先に思い浮かぶが、ほかにも健康茶やお灸のもぐさなど、食用・薬用に重宝されている。
著者の家では、家族の誕生日に、「バースディ・バス」として、「薬湯」を定めており、3月生まれの著者の誕生日には「ヨモギ湯」を楽しむそうで、ヨモギ湯のたて方なども解説。
このように、観賞するだけでなく、暮らしの中での野草のさまざまな利用法、楽しみ方を紹介。
温暖化で、季節感が失われつつある昨今だが、先人たちが残してくれたこうした季節の味わい方は、大切にしたいものだ。 (青春出版社 1980円)