「料理バンザイ!」の滝田栄さん 精神修行と仏像制作の日々
帰国後半年間、和歌山県の高野山の麓に近い友人宅に身を寄せた。
「都会での生活が想像してた以上に生々しく、しんど過ぎたんですね。しかし、それだって精神修行のひとつ。今じゃ東京のど真ん中を歩いても、座禅をしてる感覚でいられるようになりました」
役者としては06年に公開された映画「不撓不屈」に主演して以来、目立った活動はしていない。
「家庭も顧みず、ワーカホリックと呼ばれたボクが、12年間でたった1本撮っただけとは、ハハハ。これから目指すは欲を捨て、邪念、雑念を捨て去った精神勝利者、インドで呼ばれるところの“ヨギ・ラージャー”です」
住まいは八ケ岳の近く。そこにアトリエを構え、仏像制作に取り組む。
「21年前に亡くなった母の供養をしたくて、舞台が終わるとすぐにホテルに戻り、眠るのも忘れてノミとハンマーを握り、15センチほどの観音菩薩像を彫ったのが最初です。舞台やドラマで荒々しく人を斬ることはあっても、繊細な芸術には程遠かったボクにしては、思いのほか上手に彫れた。木の中から仏像が現れてくれたという不思議な感覚に感動し、以来、400キロほどのクスノキの1本を3年かけて彫ったりしてます。大変高名な仏師の“鉛筆が削れれば、誰でも彫れますよ”というお言葉が頼りですね」