選考過程を聞いた 「流行語大賞」どうやって決まるのか?
■大切なのは“記録が残る”こと
ノミネート語発表から授賞式当日までは日が少ない。この間、選考委員が直接集まることはなく、しかしメールや電話で協議は思いのほか細かくやりとりされているという。昨年は発表当日まで選定がもつれ込んだが、今年は“豊作”の年でもあり、「揉めることなくすんなり決まるのではないか」とみている。
清水氏は今年の傾向について、「とにかく強烈な言葉が多かった」と振り返る。
「とくに『保育園落ちた日本死ね』は、この言葉がどれだけの人を動かしたかを考えると、その強烈さが分かります。匿名のブログで発せられた言葉が、これまで無視され続けてきた待機児童問題に光を当てた。言葉のインパクトでいうと1番ではないでしょうか。今年は、『…死ね』とか『ゲス』とか、あんまりこういう場に上がって来ないワードが目立ちました。人と人の関係が痛々しい、トゲトゲしい世の中になったことを感じます。そんなワードを使わずにはどうにもおさまらない現実がある、ということなんでしょうか」
さらに、清水氏は「今年残念なのは安倍首相がらみのワードがほとんどないこと」と、こう続けた。
「芸能やスポーツと並んで政治家の言葉が同じステージの上に並ぶところが『流行語大賞』の面白いところなんですが……。その原因と言えるでしょうか。今年は安倍政権に対して批判的なキャスターの降板が続いたり、総務大臣の『停波発言』などもあり、政権の動きに切り込むメディアの仕事がめっきり減った感じがします。いきおい、政治家の発言や政治ワードへの注目度も低下したということだと思います」
流行語大賞で取り上げられた言葉の中には、1989年に金賞(現在の大賞)を受賞した「セクシャル・ハラスメント」のように、その後社会に定着するものも少なくない。後世に残ることも選考基準の一つなのか?
「それはまた別です。『セクハラ』や08年の『アラフォー』はすっかり定着しましたし、今年だと『神ってる』は汎用性が高く、来年以降も使われそうですが、選考のコンセプトはあくまで『今年の色を出す』こと。定着するか否かは重要視していません。ピコ太郎を例にさせてもらうと、来年は誰も覚えていないかもしれないけど『2016年にPPAPという奇妙なものがはやった』という記録が残ることが大切なんです」
年間大賞を受賞するには、授賞式にも出席しなければならない?
「できることなら、大賞以外のトップテン受賞者の方も含め、全員に授賞式には出席していただきたいです。でも、(ノーベル賞授賞式出席を辞退した)ボブ・ディランのように、式が苦手だという方もいらっしゃるでしょうから、出席は大賞受賞の条件ではありません」
強者ぞろいのノミネート語の中から“2016年の顔”である年間大賞に選ばれるのはどの言葉になるのだろうか。