<104>東京で一番の下町・京島 横尾さんがY字路に興味あるって知ってりゃなぁ
昔、『アサヒカメラ』がアジェの写真を見開きで、ばーって載せたことがあったのよ。それで、(写真評論家)伊奈信男さんが(写真家)木村伊兵衛さんに、「これ、アジェですね」って言ってたことがあったんだけど、その頃は、アジェってなんだ?っていうくらいの時期だったの。
■世の中っていうか、人生はたいして変わっていない
アジェが撮ってる場所とは違うけど、パリへ実際に行ってみると、パリの街角はどこでも「な~んだ、アジェじゃないか」っていう感じだものなぁ。石の建物と舗道と、アジェの写真集で見たようなのばっかりですよ。だからさぁ、世の中っていうか、人生はたいして変わってないんだって、新しいものなんてないんだねぇ(笑)。
そういうことがあるから、この京島の写真なんか見ると、もうワクワクするわけ。オレはまだアジェを引きずってるんだねぇ。アジェがまだいいと思うのよ。こういう光景にぶつかると、また行ってみようって思うんだよね。いまは「クルマド」になっちゃったけどね(荒木の造語で車の窓から撮影することを“クルマド”と呼ぶ)。
(構成=内田真由美)