長谷川博己「アンチヒーロー」は、法はそれほど単純でも一面的でもないことを教えてくれる
NHK朝ドラ「虎に翼」のヒロイン・猪爪寅子(伊藤沙莉)は、弁護士になることを目指して大学で法律を学んでいる。彼女が法に対する信念を表明する場面があった。
「私はね、法は弱い人を守るもの、盾とか傘とか温かい毛布とか、そういうものだと思う」
確かに正論だが、法はそれほど単純でも一面的でもない。それを教えてくれるのが、今期の日曜劇場「アンチヒーロー」(TBS系)だ。
主人公である弁護士、明墨正樹(長谷川博己)は言う。「(依頼人が)本当に罪を犯したかどうか、我々弁護士には関係ないことだ」と。法の扱い方によっては、有罪であるべき人間も無罪に出来るということだ。
最初の案件は町工場社長の殺害事件だった。逮捕・起訴されたのは社員の緋山(岩田剛典)だ。検察側は監視カメラの映像や現場にあった緋山の指紋、被害者から採取した皮膚のDNA鑑定、そして有力な証言などを並べて有罪を主張した。
明墨は違法すれすれの調査も辞さずに反証材料を集め、検察側の論拠をことごとく撃破。さらに検察官と法医学者による証拠の捏造も暴いていく。最終的に緋山は無罪となるが、その真相は……。
明墨を突き動かしているのは、自分たちの都合でシロ(無罪)もクロ(有罪)にしてしまう、検察という権力に対する怒りだ。魅力的なダークヒーローの登場である。