高松市「庭園」「建築」「アート」「絶景」 瀬戸内の美に圧倒される旅
一歩一景の名園
瀬戸内海の穏やかな気候に恵まれた高松市の魅力は、うどんだけではない。美しい自然やアートにも心を奪われる。ゴールデンウイークは3年に1度の「瀬戸内国際芸術祭」も開催中(春会期は4月18日〜5月25日)。見どころはいっぱいだ。
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日本三名園といえば金沢市の「兼六園」、岡山市の「後楽園」、水戸市の「偕楽園」。いずれも江戸時代に整備された回遊式の大名庭園だ。その三名園に劣らない造形美を備えるのが「栗林公園」である。「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で、「わざわざ旅行する価値がある」として3つ星を獲得した名園だ。
借景のような効果をもたらす紫雲山も庭園の一部で、総面積は23万坪と国の特別名勝に指定されている文化財庭園としては最も広い。園内には6つの池と13の築山、1400本の松があり、ぐるりと回るのだけで1時間半以上かかる。
「“一歩一景”と言われ、歩くごとに景色が変わるのも魅力です」(ボランティアガイドの明石豊重さん)
松を生垣のように配した箱松は他の庭園では見られないもので、300年以上にわたり手入れされ続けてきた。
富士山を模して造られた飛来峰から南湖を眺めると、絵画のように美しい風景が広がる。1日かけて散策しても飽きない場所だ。
高松市栗林町1−20−16
℡087・833・7411
https://ritsuringarden.com
丹下健三が手がけた戦後モダニズム建築
1950(昭和25)年から6期24年にわたり県知事を務めた金子正則は、「文化もなければ人の真の幸せはない」と訴え、経済面だけでなく心の豊かさも追求した。戦後モダニズム建築を代表する文化遺産として知られる香川県庁舎の旧本館と旧東館は、金子が交流のあった芸術家・猪熊弦一郎に紹介された建築家・丹下健三が手がけたもの。全面ガラス張りの1階ロビーで圧倒的な存在感を示す陶板壁画「和敬清寂」は、その猪熊の作品である。
金子は「民主主義時代にふさわしいもの」「観光香川にふさわしいもの」などの条件を示し、のちに「デザイン知事」の異名を取った。
「建築費は約5億円。90億円規模だった県予算の5%以上を投じたことになります。当時としては四国一高い建物で、屋上にはレストランも併設されていました」(文化財専門員・石田真弥さん)
旧本館は日本で初めて中央に“背骨”をつくる「コア・システム」を採用。執務空間に柱はなく、間仕切りを使った自由な配置を可能している。
高松市番町4−1−10
℡087・831・1111
https://www.my-kagawa.jp/feature/higashikan/higashikan
「公務員建築士」が設計した重要文化財
丹下健三の県庁舎建築に県庁職員として携わり、自らも屋島陸上競技場や県立武道館、農業試験場農林センター館の設計を手がけたのが山本忠司だ。瀬戸内海を見下ろす五色台にある「瀬戸内海歴史民族資料館」も山本の設計。正方形の展示室を地形に合わせて上下左右に配置したユニークな建物で、2024(令和6)年に重要文化財に指定されている。
「地形を生かしたつくりりのため、展示室は最大で7㍍の高低差があります。外壁には基礎工事の際に出た安山岩を積み上げています」(館長の松岡明子さん)
館内には、瀬戸内海に接する11府県を対象にした資料が展示されている。
高松市亀水町1412−2
℡087・881・4707
https://www.pref.kagawa.lg.jp/kmuseum/setorekishi/
MOMAに飾られた「Red and Black」
「川島猛アートファクトリーミュージアム」は、2016年にニューヨークから地元・香川に活動の拠点を移した芸術家・川島猛さんのギャラリーだ。
川島さんは1963(昭和38)年に33歳で渡米。キャンパスの中を格子で仕切り、枠の中に異なる有機的なフォルムを描いた「Red and Black」は、2年後にニューヨーク近代美術館(MOMA)で展示され話題になった。その1つは現在、同館の永久所蔵品になっている。
53年に及ぶニューヨーク生活で数多くの作品を制作していた。代表作の1つ「ドリームランド」は、瀬戸内国際芸術祭(男木島会場)でも見られる。
川島さんの作品は街中でも存在感を放つ。高松中央商店街のドーム広場は巨大なアート作品で、平和に暮らす人たちの様子がデザインされていて、歩道やベンチも作品だ。
高松市亀水町1411
℡087・802・6888
https://kawashima-af.com
高松市街と瀬戸内の島々の絶景
源平合戦の屋島の戦いの舞台となった屋島。その山頂からは、高松市街や瀬戸内海の島々を一望できる。その絶景は、見事というほかない美しさ。
四国霊場八十八ヶ所の84番札所の屋島寺、1周200メートルの回遊型施設「やしま〜る」も見どころだ。
休暇村「讃岐五色台」
瀬戸内の絶景を独り占めできる「休暇村 讃岐五色台」が3月27日にリニューアルオープンした。新たに設けられた広さ400平方㍍のテラスから眺める瀬戸大橋と瀬戸内海の多島美は圧巻で、沈みゆく夕日とともに眺めていると、ささいな日常の出来事などすっかり忘れてしまう。圧巻の絶景だ。穏やかで美しい瀬戸内の風景は、新しくなった露天風呂や内湯、客室からも見ることができる。
夕食は「香川のうまいもの」をコンセプトにしたビュッフェスタイル。サワラやタイの刺身など、瀬戸内の海の幸が日替わりで並ぶ。ライブキッチンでは、地元ひまわり牛のローストビーフも用意されている。
坂出市大屋冨町3042
℡0877・47・0231
http://www.qkamura.or.jp/goshiki/