水川あさみ「笑うマトリョーシカ」には奥行きあるヒューマンサスペンスを期待
7月になり、夏の連続ドラマが始まった。その中で早くも先週金曜にスタートしたのが、水川あさみ主演「笑うマトリョーシカ」(TBS系)だ。
主要人物は3人いる。道上香苗(水川)は東都新聞文芸部の記者。厚生労働大臣として初入閣した代議士、清家一郎(桜井翔)。そして清家の有能な秘書である、鈴木俊哉(玉山鉄二)だ。
初回は、スピーディーな展開と濃厚な中身で見る側を引きつけていた。カギとなるのは、香苗が清家を取材した際に感じた、強い「違和感」だ。若き総理候補とも呼ばれる清家だが、「主体性」というものが希薄だった。ソツのない言動も、まるで「AI」のようだ。
その分、秘書の鈴木が不思議な威圧感を放っている。香苗の目には彼が「策士」に見えた。清家を操っているのは鈴木かもしれないのだ。高校時代からの友人である清家と鈴木が、いかにして現在の立場までたどり着いたのか、知りたくなる。
さらに、清家が学生時代に書いた「卒業論文」が登場した。テーマは、ヒトラーを操ったという、エリック・ヤン・ハヌッセンだ。これもドラマの中でどう機能していくのか、かなり興味深い。
原作は早見和真の同名小説で、そこでの主な語り手は鈴木だ。しかしドラマでは、香苗を軸に絶妙なトライアングルが形成されている。3人の俳優が拮抗する、奥行きのあるヒューマンサスペンスが期待できそうだ。