生命予後が延びる可能性 がん治療中「ロコモ対策」とは何
■移動能力の回復が生活を一変させる
82歳の乳がんの女性は、右大腿部に痛みがあった。
がんの痛みとして医療用麻薬オピオイドを投与していたが、良くならず、放射線治療も導入することになった。
その前に整形外科で調べたところ、痛みの原因は腰部脊柱管狭窄症による神経症状と判明。右大腿部痛の原因となっている神経根に対してブロック注射を行うと痛みは改善し、オピオイドは減量。放射線治療も受けないでよくなった。
つまりがんロコモ対策とは、①骨転移やがん治療による移動能力の低下②がんの痛みと誤診されやすい、もともと持っている運動器疾患の2つを見逃さず、適切な治療を行うことだ。
たとえ余命数カ月と診断された患者でも、移動能力を取り戻すことは生活を一変させる。骨転移などで体が痛くて寝返りも打てなかった人が、座って口から食事をできるようになる。自分の足で歩いて好きなところへ行けるようになる。
がんロコモの認知度はまだ十分ではない。主治医が消極的かも、と感じたら、「がんロコモ」のパンフレットが病院に置いてあればそれを見せるか、がん相談支援室、ソーシャルワーカーに相談するといい。
骨転移があれば、鎮痛薬、放射線治療、装具治療、手術、薬物治療などが検討される。別の運動器疾患があれば、それに準じた治療が行われる。