【血圧上昇ホルモン】脳に作用して塩分を取りたい気分に
このように血圧上昇ホルモンは陸上の生物にとって欠かせないが、塩分の取り過ぎは高血圧の大きな原因になる。
高血圧の治療薬(降圧剤)で最初に使われることの多い「アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)」は、アンジオテンシンⅡが受容体に結合するのを妨げて、血管を拡張させ、血圧を下げる薬だ。
アンジオテンシンⅡの産生が過不足を起こす病気はないが、アルドステロンが過剰に分泌される病気がある。「原発性アルドステロン症」だ。
「以前はまれな病気と思われていましたが、診断技術の向上で最近では高血圧患者さんの5~10%がこの病気だとみられています。典型的な症状は、高血圧と低カリウム血症ですが、低カリウム血症を伴わない場合もあります。また、正常血圧の原発性アルドステロン症も報告されています」
低カリウム血症の症状は、腎臓の濃縮障害による多飲、多尿。重症になると、突然、手足の筋肉が麻痺(まひ)して動かなくなる周期性四肢麻痺が起こる。就寝中に起こることが多く、糖分の過剰摂取などで誘発されるという。
原発性アルドステロン症は、片側の副腎にできた良性腫瘍が原因のことが多い(約7割)が、両側性の分泌増加も2割を占める。原因が片側なら手術、両側性なら薬物療法が行われる。