嗅覚・味覚障害の原因は支持細胞が炎症で障害された可能性
新型コロナウイルスにより嗅覚障害が生じる細かいメカニズムはまだ十分には解明されていないが、以下のようなことが考えられている。
通常のウイルス性の風邪と同様に、鼻粘膜の浮腫、鼻汁といった鼻炎症状により匂いを感知する嗅細胞まで匂い物質が到達できないことと、神経細胞へ感染しやすい新型コロナウイルスの直接的な神経の障害の可能性だ。
しかし、新型コロナウイルスによる嗅覚・味覚障害は、神経そのものの障害とするには早期に改善する例が多いため、神経細胞自体の障害よりも神経周辺の炎症によって嗅細胞の支持細胞などが間接的に障害されることにより、嗅神経の機能が阻害されていると考えるのが自然だ。
味覚障害に関しては、舌の味覚をつかさどる味蕾や神経へのウイルスによる障害に加え、嗅覚障害に伴い食品の匂いがわからないことによる風味の障害が機序として想定されている。
ちなみに欧州の多施設において軽症から中等症の患者415人に対して行ったアンケート調査の結果では、85・6%の人に嗅覚障害がみられ、88・0%の人に味覚障害がみられた。11・8%で他の症状に先行して嗅覚障害が出現。44・0%で嗅覚障害が早期に回復した。男性よりも女性の方が有意に嗅覚・味覚障害が多かった。