著者のコラム一覧
東丸貴信東邦大学名誉教授、平成横浜病院健診センター長

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

嗅覚・味覚障害の原因は支持細胞が炎症で障害された可能性

公開日: 更新日:

 新型コロナウイルスにより嗅覚障害が生じる細かいメカニズムはまだ十分には解明されていないが、以下のようなことが考えられている。

 通常のウイルス性の風邪と同様に、鼻粘膜の浮腫、鼻汁といった鼻炎症状により匂いを感知する嗅細胞まで匂い物質が到達できないことと、神経細胞へ感染しやすい新型コロナウイルスの直接的な神経の障害の可能性だ。

 しかし、新型コロナウイルスによる嗅覚・味覚障害は、神経そのものの障害とするには早期に改善する例が多いため、神経細胞自体の障害よりも神経周辺の炎症によって嗅細胞の支持細胞などが間接的に障害されることにより、嗅神経の機能が阻害されていると考えるのが自然だ。

 味覚障害に関しては、舌の味覚をつかさどる味蕾や神経へのウイルスによる障害に加え、嗅覚障害に伴い食品の匂いがわからないことによる風味の障害が機序として想定されている。

 ちなみに欧州の多施設において軽症から中等症の患者415人に対して行ったアンケート調査の結果では、85・6%の人に嗅覚障害がみられ、88・0%の人に味覚障害がみられた。11・8%で他の症状に先行して嗅覚障害が出現。44・0%で嗅覚障害が早期に回復した。男性よりも女性の方が有意に嗅覚・味覚障害が多かった。

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