患者と医者は運命共同体 医師の言葉で気持ちが明るくなった
今年の正月は、Kさん(64歳・男性)の家には誰も来ませんでした。前立腺がんの手術を受けてから2年、妻に先立たれているKさんは、テレビで箱根駅伝を見ながら、ひとりで過ごしました。
娘と孫からは、「お正月は行けないけど今年もよろしくね」とスマホの画面越しに挨拶があっただけ。新聞で報じられている新型コロナウイルス、Go To、アメリカ大統領……などの記事を読みながら、Kさんは何かもっと明るい話題が欲しいと思いました。
昨年暮れに幸先詣をしていたので神社に行くこともありません。それでも、「新年を迎えられたことはありがたいことだ」と思い直しました。手術後も大きな問題はなく、きっとこの分なら今年も春に桜を見ることができそうです。
年が明けて4日は、2021年最初の診察日でした。通院しているP病院の入り口には、手の消毒の噴霧器があって、「明けましておめでとうございます。マスクの着用をお願いします。院内の滞在時間を極力短くしてください」という大きな掲示があります。
朝食を取っていなかったKさんは、採血検査を終えると待合フロアの椅子に座り、マスクを顎まで下げて、売店で買ったサンドイッチを食べながら診察を待ちました。1時間ほどたって呼び出しがあり、Kさんは診察室に入りました。