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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

難治性のスキルス性胃がんに分子標的薬が有効な可能性も

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 腹膜播種を抑える治療法として、抗がん剤を腹部に直接注入する腹腔内化学療法が期待されています。東大病院では昨年7月からスキルス性胃がんへの効果を確認するための治験をスタート。今後、国立がん研究センターらの研究チームの成果を加味すると、分子標的薬の腹腔内投与も検討されると思います。

 スキルス性胃がんは、転移のない、手術ができる段階で見つかっても5年生存率は15%ほど。通常の胃がんはステージ1なら9割を超えるため、その差は歴然です。スキルス性は、手術できるケースでも腹膜に転移しやすい特徴があり、腹膜播種を強力に抑えることはとても重要なのです。

 通常の胃がんは、ピロリ菌の感染や喫煙の影響を受け、50代から増加。80代が発症のピークになります。スキルス性は若い方や女性も珍しくありません。1993年、がん告白会見で世間を驚かせた逸見政孝さんは48歳で生涯を閉じました。

 若い方のがんは高齢者以上に職場や家庭への影響が大きく、今回の発見の意義は計り知れません。今後、スキルス性胃がんの治癒につながることが期待されます。

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