高齢でもLDLコレステロールを下げると心血管病を防げる コロナ禍で改めて注目
動脈硬化が進むと、血管の弾力性が失われて硬くなり、血管の内側が狭くなって血液が流れにくくなる。すると、脳卒中、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、末梢動脈疾患といった心血管疾患を発症しやすくなってしまう。
「LDLは食生活の見直しや運動などで数値を改善することも可能ですが、難しい場合はスタチンなどのコレステロール降下薬による薬物治療が行われます。ただ、75歳以上の高齢者では有用性が低いとされ、米国心臓病学会と米国心臓協会のコレステロール管理ガイドラインでは高齢者のLDLコレステロール低下療法は推奨度が低く扱われていました。動脈硬化は数十年単位で進行するため、ある程度進んでしまった高齢者ではLDLを下げてもそれほど効果が見込めないと考えられていたのです。一方、欧州心臓病学会と欧州動脈硬化学会の脂質異常症ガイドラインは、高齢者の治療を支持しているなど、いまも議論が続いている状況です」
■画像診断検査を活用すべき
そんな中、最近になって「LDL低下療法は、75歳以上の高齢者でも75歳未満と同じように心血管イベントの抑制に効果的」とする研究が世界的な医学誌「ランセット」で報告された。米ハーバード大学医学大学院の研究チームが、24の試験を解析した「CTTC」と、5つの単独試験を合わせた6つの研究論文を対象にメタ解析を実施。その結果、高齢者における主要血管イベント(心血管死、心筋梗塞などの急性冠症候群、脳卒中、冠動脈血行再建術)のリスクは、LDL値が1mmol/L低下すると26%低かった。これは、75歳未満の場合(15%のリスク低下)と有意差がなく、高齢者でもLDLを下げるコレステロール低下療法は有益であることがわかった。