「脂質=油」はわれわれの心臓に大きな影響を与える
前回、日本人の心臓に問題を引き起こす最大の要因になっている「高血圧」についてお話ししました。もちろん、心臓トラブルに関係しているのは血圧だけではなく、近年、注目されているのが「脂質=油」です。
脂質は大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。飽和脂肪酸は、バターなどの乳製品や肉、ラードといった動物性脂肪、ココナツ油などの熱帯性植物油脂に多く含まれています。一方の不飽和脂肪酸は、構造の違いからさらに「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分けられ、前者はオリーブオイルや、なたね油(オレイン酸)、後者は植物油(オメガ6系脂肪酸=リノール酸)や青魚(オメガ3系脂肪酸=EPA、DHA)に多く含まれます。
これらの脂質=脂肪酸が心臓に与える影響について、世界各国でさまざまな研究が報告されています。アメリカ心臓病協会は、「摂取する動物性の飽和脂肪酸を減らし、植物性の多価不飽和脂肪酸を増やすと心血管病の発症や死亡を減らす」として、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えるよう勧告しています。
大規模研究によって、飽和脂肪酸は動脈硬化の原因になるLDLコレステロールを増加させ、心臓疾患を起こしやすくする。一方の多価不飽和脂肪酸はLDLコレステロールを減らして動脈硬化や血栓を防いだり、血圧を低下させることがわかったからです。