抗菌薬が効かない「耐性菌」の拡大を防ぐために心がけるべきポイント
耐性菌が増えると、それまでは抗菌薬を使えば回復できた感染症の治療が難しくなり、重症化や死亡を招くリスクが高くなる。そのため、日本も含めた世界各国で耐性菌の拡大防止の取り組みが行われているが、十分とはいえないのが現状だ。「細菌が薬剤耐性を獲得するのは、抗菌薬の使用が大きく関わってるといわれています。抗菌薬は細菌にとっては猛毒ですから、細菌は生き延びるためにその抗菌薬を無効にしようとします。それを繰り返すうちに、細菌はさまざまな耐性システムを構築するのです。たとえば、細菌自体の内部に入ってきた薬を外部に出す『排出ポンプ』、細菌を覆っている細胞膜を変化させて薬の浸透を弱める『外膜変化』、薬から身を守るためにぬるぬるした粘着物で細菌自体を覆う『バイオフィルム』、細菌内部で薬が標的にする部分を変化させて薬の効果をなくす『遺伝子変異』、薬が細菌に到達する前に化学反応で分解する『ベータラクタマーゼ』などがあります」
耐性システムを持つ耐性菌が発生すると、持っていない細菌にそのシステムを受け渡したり、システムを持たない細菌が抗菌薬で死滅すると、システムを持つ耐性菌が取って代わって増殖していく。耐性菌がひとつ発生しただけで、一気に増える可能性があるのだ。