「2つのことを同時にこなせない」が脳の老化を加速する?
屋外の歩行は、手足を動かすだけでなく、道路標識や信号の確認、位置情報の把握など、複数の認識能力を同時に使うことが求められます。
「テレビを見ながら掃除をする」など、2つのことを同時に行う課題を二重課題と呼びますが、屋外歩行も二重課題の典型例といえるでしょう。
高齢者における歩行能力の低下は認知機能の低下や転倒リスクの増加に関連することが知られています。しかし、二重課題の実行能力と認知機能の関連性については、質の高い研究データが限られていました。そんな中、健康長寿に関する専門誌の2023年3月号に、二重課題の下で歩行する能力と、認知機能の関連性を検討した研究論文が掲載されました。
スペインで行われたこの研究では、40~64歳の640人が対象となりました。被験者に対して、自由に45秒歩く通常の歩行テストと、ランダムに選ばれた3桁の数字から、「3」を引いた数字を答えながら、自由に45秒歩くテスト(二重課題下の歩行テスト)を実施し、2つのテストで得られた歩行状態の差から、二重課題の実行能力が見積もられました。また、心理テストによる認知機能の評価も行っています。