前立腺がん治療最前線…がんだけを狙い撃ち、尿失禁ゼロの先進医療
小路医師は現在PSA値が高い場合、まず行うのは特別な方法によるMRI(マルチパラメトリックMRI)。2009年に米国の医師が発見した撮影法で、精度が通常の撮り方より高い。この結果でがんの疑いが強ければ生検を実施、そうでなければ数カ月後に再検査としている。
さらに生検においても、事前に撮ったMRI画像と超音波画像を融合。ナビゲーションを用いて、がんが疑われる場所に確実に生検針が刺さるようにする。この新たな診断プロセスによって、がん検出率は80%以上にも上るという。
早期の前立腺がんは、がんの分布によって大きく3つのタイプに分けられる。「多発」「限局」「低悪性度」だ。
「がんが多発していれば、前立腺全体を治療する外科的切除や放射線治療となります。低悪性度なら、慎重な経過観察(監視療法)を勧めます。一方、限局タイプであれば、外科的切除や放射線治療も可能ではあるものの、術後の尿失禁や勃起障害を免れるのは難しい。そこで、HIFUでがんだけを狙い撃ちするのです」
HIFUで前立腺組織が破壊されるとむくみが生じる。むくみで前立腺が動くと、狙い撃ちは難しくなる。そこで小路医師は、むくみで生じる前立腺体積の変化や変異を測定し、世界で初めて定量化。治療前にあらかじめ前立腺を圧迫して動かなくする方法を考案し、確実に「標的局所療法」をできるようにした。