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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

マスクの効果を検討した「メタ分析」…1つの論文で多くの論文情報が手に入る

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 ランダム化比較試験の統計学的に差がないという研究の解釈もそう単純ではなかったように、メタ分析の結果なら信頼できるというのも、またあまりにナイーブな考えである。

 こうした問題点を踏まえた上で結果を見てみよう。結果は相対危険と95%信頼区間で示されており、0.47(0.29~0.75)と報告されている。100の感染を47に減らし、効果を小さく見積もっても100から75にまで減らすという結果である。相対危険0.82というデンマークの研究を含んでいるにもかかわらず、それに比べてはるかに大きな効果を示していることからもわかるようにランダム化比較試験以外の研究では全て統計学的にも有意な効果を報告し、それぞれの研究の相対危険も0.21から0.77の範囲にある。

 この違いをどう考えるかであるが、ランダム化比較試験以外ではマスク着用者と非着用者を比べているのに対し、ランダム化比較試験ではマスクを勧めるという指示をした結果、40%程度がマスクを着用しているにすぎず、マスク着用の効果を過小評価している可能性が高い。ただ、ランダム化比較試験以外の研究では、マスク以外の予防行為が交絡している可能性や、そもそも感染リスクが低い自己選択バイアスの影響もあり、効果を過大評価しているかもしれない。

 そう考えると、マスク着用の効果は「100から82まで感染を減らす」というランダム化比較試験の結果と、「100から47にまで減らす」というメタ分析結果の間にある、というのが妥当な判断かもしれない。

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